忙しいから、最低限のことだけ書いておく(2)
とりあえず、ちょっと補充しておくと、日本とか女とかでひとまとまりにされるのが私は性に合わないが、そうしたがる人たちが、せめては言葉通りにきちんとそれをやってくれるなら、まだしもまあ私の好みとはちがうが、納得できる。
こんな風にまとめたがり、まとまりたがる人たちが決定的に偽物臭いのは、決して日本人とかどこそこ大学とか女とかで、ひとくくりにはしていないことだ。
私はいろんな場所で何度か、自分の出身大学がすばらしいとたたえて、皆でいい気持になろうとする人に対して「そんなにいい大学ですか」とせせら笑って気を悪くさせたが、それは、もし本当にそう思うなら、その大学に所属するすべての人を、その大学の関係者だからというだけで愛し認めるべきだと思うからだ。私のように、その大学をくだらないと公言し、そう思っている人も含めて。
大学に限らない。いろんな組織、共同体、すべてにおいて、「私たちはすばらしい集まりだ」と強調してまとまろうとする人は、そうしない人、いや、その前に自分の気に入らない人を攻撃し排除するために、そうしている。それは私に言わせれば、その集まり、共同体、大学、国家を愛することでも何でもない。私物化し、利用し、冒涜するものでしかない。
日本民族を愛するなら(それもまた、国籍なのか言語なのか外見なのか血統なのか何を定義にするのかわからないが)少なくとも、日本人であるからには外国に情報を売ろうと敵前逃亡しようと国家転覆を企てようと徴兵拒否しようと「同じ日本民族だから」と愛するのでなくては話にならない。
実際にそういう気持ちの愛国者もいると思う。だがおそらくはそれ以上に、ちょっとでも自分の意見や好みや時の支配体制の意に染まない日本人は、いくら日本人でも愛さないで嫌悪し排除する人が多い。それのどこが愛国者なのか私には理解できない。この美しい国に生まれ、ともに生きてきた同じ人種なら、何をしようと何を言おうと無条件で愛してこそ愛国心というのではないのか。言っておくが、私は同じ人類で地球に住んでいるというだけで、どんな人間でも歯をくいしばってでも愛する覚悟は一応している。だから、日本や日本人をこよなく愛すると公言する人たちが、同じ日本人なのに自分と意見のちがう人を、やれ非国民の国賊の売国奴のと切り捨ててしまえる感覚が、むしろまったくわからない。前に言ったやたらと大学や共同体への愛を口にして自分の気に入らない人を攻撃する人に、私はかつて「それって愛校心でも何でもない、あんたのただの仲好しグループじゃないの」と言って激昂されたが、それと同様の理解しがたさを覚えるのだ。
女性をひとつにくくりたがる人も同様で、たとえば女はおとなしくしていて男が守るべきだと主張する人が、本当にそう信じていて、しわくちゃの老婆でも、見るにたえない醜い女でも、性格が恐ろしく悪い女でも、私のように守ってほしくなんか全然ないと言い切る女でも、自分が大嫌いで見るのもいやな女でも、ものすごく強くて男をひねりつぶす女でも、とにかくそれでも女ならもうすべて身を呈して守るというのなら、まだそれなりにわかる。ヨーロッパの騎士道精神にはそういった面がまだある。
しかし、少なくとも私が自分の周囲やマスメディアで見る「女は男に守られていろ」と主張する男性は、自分の意見に反対する女性には、それこそ対等以上に全力で攻撃をかけるし、自分の好みに合わない女性は公然と侮蔑し嘲笑う。それでけっこう、私にはその方がいい。女だからというだけで、どんな嫌いな女でも命にかえて守れなどと気の毒過ぎて、それこそどんな嫌いな男性にも、そんなひどい要求はできない。
だが、そんなことをする男性が「男は女を守るべきだ」と言っても、それはただ、自分の好みの女を守りたいだけで、それ以上でもそれ以下でもない。それは「男が女を守る」ことでも何でもない。たかが自分の好む行動と生き方をするのに、何をそう恥ずかしがるのか、これも私には理解できない・・・まあ理解できないでもないが、みじめで哀れで、見ていられない。
国を愛するのも国旗や国歌を愛するのも、それと似たところがある。自分が好きでたまらなくて、そうでない人が我慢できないなら、せめて堂々とそう言ってくれた方が話が早い。好きでもないのに、とにかく皆でいっしょに何かするのが好きなら、それもそう言ってほしい。何でこう、自分の好みを皆の義務にしたがる人が多いのか。何を安心したがっているのか。
まあ、国旗と国歌の問題は、長くなるからまたにしょう。
しかし、話はまだ終わらない。やれやれ、何がもう、「ちょっと補充」だ。(笑)