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忙しいから、最低限のことだけ書いておく(4)

私が今の日本を見ていて一番心配なのは、私自身もそうですが、こういうことを書いたり言ったり話し合ったりする時間が、本当に誰にもないことです。
定年退職した私がこうですよ。若い皆さんはとても歴史がどうの戦争がどうのアメリカや中国がどうのと日々考える時間はひねり出せないでしょう。
昔の学生だってそうじっくりと自分で考えていたわけではないし、私もそんなに正しく複雑に情勢を分析できていたわけではない。それでも一応、当座の役にはたたないことを、あれこれ考え、国連やアメリカや日本のやり方に怒ったり笑ったりはしていました。

今の世界は本当にわかりにくい。冷戦構造が崩壊してから、どっちの側でも悪役がはっきりしなくなりました。
もしかしたら、すべての基本となるような、これだけは譲れないという基本的な哲学や美学を一人一人が持つことから始めた方が、いっそ早いのかもしれません。人を殺さないとか。弱いものを守るとか。争いはさけるとか。そういうことをしているかどうかで、世界を見て国家を見て、どこが悪役かを判断するとか。

だから、古典文学を読むのも必要なのですね。人類が遠い昔から積み重ね、引き継いできた生き方の基本が、そこにあるのですから。
国旗と国歌の問題にしても、話せばいろいろありますが、決して左翼ではない、むしろヒットラーのナチスがわりと評価していたようなシラーの戯曲「ウィルヘルム・テル」を読むと、絵に描いたような悪役の代官ゲスラーが町の広場に自分の帽子を竿の先につけて立てて、お辞儀をしない者は投獄するという法律を作っている。
日の丸君が代はデザインとして曲として私はそんなに嫌いでもないんですが、それをあがめたくない、歌いたくない人に無理やりそうさせ、チェックし、罰するというのは、古典文学を見ていたら、どう転んでも悪役のすることですよ。人類の叡智には、そういう行為は入っていません。もちろん、いじめも、差別も。復讐は、う~ん、ちょっと微妙かな。

おっと、また最低限ではない話に陥りかけていた。(笑)
とにかく私が気になるのは、学生の皆さんだけでなく、国民全体が、もう忙しいから、庭の草木の剪定も、ペットの世話も、親の介護も、水道管の修理も、皆、専門の業者に頼もう、そういう人にまかせて何も考えないようにしよう、という気分と同じ感じで、国防のことはアメリカと自衛隊に何とかしてもらって、考えないでおきたい、と思っているんじゃないかということです。

いや、草木の剪定や親の介護はまあしかたがないとして(本当はそれも、自分でできたらいいんでしょうが)、国防や平和の問題は、健康管理や財産管理と同じくらい、絶対に自分で充分とりくむ気でいないと危ない。それも、テレビのワイドショー見て新聞読む程度じゃなく。周囲の誰かの考えだけを一方的に信じるんじゃなく。

どうも、政府に対する批判にしても、見ていると、「何でもう、すべてまかせたのに、うまくやってくれないんだよ!」みたいなところが国民全体にあって、だから小泉さんや石原さんみたいに、一方的にひっぱって行ってくれると安心して楽だからいいみたいな風情で、それはやっぱりまずいと思う。

国防に関して言えばですね・・・って、また続けるしかないか。

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カツジ猫