恥を知れ
ジャニーズ会見のいろいろ、まだむしゃくしゃが治まらない。それから、この関連のコメントで、事務所に所属しなかったけど、レイプ被害を受けて、高齢の今も精神が不安定で診療を受けようとしているという男性の告発に対して、「何で今ごろになって診療を受けようとするのか。怪しい」なんて抜かしてる人にも、ついでにむかつく。他人に言えず、自分でも思い出せず、長い年月苦しんで、人生もゆがんで、ようやく世間がこの状態になって、自分の体験を見つめられるようになりかけている人の、傷の重さと年月の苦しみを、想像さえもできないのか。レイプ社会や差別社会を支えて増長させているのは、こういう、のほほんと鈍感な人たちの群れなんだと、軽蔑と憎悪で震えながら思う。
例のアベ元首相のご友人のジャーナリストにレイプされて、事件をもみつぶされて、果敢に闘った伊藤詩織さんにしてからが、私は体験記を読んで唖然としたが、あの強い賢い彼女でさえ、酔わされてホテルでレイプされた翌朝、警察にかけこむとかホテルに伝えるとかしないで、黙って家に帰ってシャワー浴びてるんだよ。何という、おぼこな対応だと私は読んでて唖然としたが、あのような意識の高い人にして、とっさにそうしてしまうほど、向き合えない重い現実なんだよ。そういう被害は。
思えば私も子どものころ、太って胸が年の割に大きかったから、満員の汽車の中ではしょっちゅう男性に胸をさわられ続けていた。それは何年も続いたが、私は家族にも友人にも、いっしょに汽車に乗ってすぐそばに立っていた叔母や叔父や母にも、一度も言ったことがない。日記にさえも書かなかった。どういうことかわからずに、思い出しもしないようにしていた。
大学に入ってからは映画館でしょっちゅう同じことがあったけれど、その時は同じ体験をしている友人と、ぼやきあったり、傘で突いたとかけとばしたとかバッグでバリケードしたとか対策を話しあって笑ったりしていたから、相手をはっきり犯罪者、敵として認識していられたのもあって、そんなにストレスではなかった。一方で別の友人は、そんな体験が皆無だと言い、むしろ私を「どこがそんなに魅力的なんだ」と、手放しに無邪気にうらやましがった。それはそれで、まちがった反応とは思うけれど、それなりに私の心を、どこかで救ったのは否めない。
そういうことがいろいろあるのだ。この手の犯罪や被害には。私は今でもあれだけ胸をさわられて、何も言わずに感じずに忘れ続けた自分の心理や感覚を、まだ充分には分析も理解もできない。レイプやいじめやDVも、すべてはこのように人の心や脳髄を長年にわたって凍結し仮死状態にする。それを充分に理解してほしい。そして、それを数百人に与えていた犯人と、それをかばい続けた集団を、どんな意味でも許してはならない。