戦争トラウマについて(1)
書かなくてはならない、書きたくてたまらない本の感想が山積みなのだが、さしあたり、これから行くか。「ルポ 戦争トラウマ 日本兵たちの心の傷にいま向き合う」です。
たしか、八月にNHKその他で、戦争に関するいい番組がいくつもあって、その中のどれかでしたが、戦争で精神を病んだ人たちの病院が紹介されていました。
昔のことですから、カルテなども皆手書きで、それが綴じられたファイルが、書庫だか物置きだかの棚にぎっしり詰まっているのです。
その中のたった一冊、その中のたった一枚のカルテが紹介されました。その患者が精神を病んだ原因は、敵地(多分中国)で、命令で民家を襲って住人を皆殺しにし、特に子どもを殺したことが原因だったと書かれていました。
建物ぎっしりにつまった、うずたかい膨大なカルテの中に、そんな理由が書かれているものが、どれだけあるのか、見当もつきません。
はっきりと精神を病んで、病院に収容された人以外にも、それに近い心の傷を負った人がどれだけいたかは、見当もつきません。そのケアもされないままに故郷に帰り、戦後の生活を送った人々がどれだけいたかも、想像もつきません。
映画「ライアンの娘」のヒロインの恋人となる若い軍人をはじめ、映画にもこのような苦悩を抱えた兵士たちは描かれてはいましたが、それほど大々的にとりあげられたことはなかったと思います。
この「ルポ 戦争トラウマ」は、それを中心に据えて、調査し考察した本です。そして、とてもわかりやすく、読みやすく書かれています。戦争について考えたり話し合ったりする人に、絶対にぜひ読んでもらいたい本です。そして、これは私の強い気持ちですが、フェミニズムや男女についての問題について考える、特に女性の権利について主張したり戦ったりする人たちに、必ず読んでほしい本です。
私はこれまで、女性が差別されることに対する怒りは誰にも負けないぐらい常に持って来たし、そのことで、ひるんだり遠慮したりすることなく、発言し行動し、戦ってきたつもりです。
それでも、いつも私が強く感じていたのは、「人を殺し、自分も殺されるかもしれない」仕事を、否応なしに押しつけられる男性という存在に対しての、それこそは最大の差別ではないかという怒りでした。それを意識し認め、戦おうとしない限り、どんな女性のための戦いも、不完全だし、偽りだと思い続けて来ました。「男性には闘争本能があるから」とか「男性が好きで戦うのはしかたない」とかいう女性には、死ぬまでお茶くみと慰安婦しとけと思ったし、男性がまた、その状況を受け入れて抵抗せず、変に虐げられた女性のために戦おうとするのにも、そんなこと言ってる場合か、自分たちの状況に目を向けろ、それを見ないでごまかすなと思い続けて来ました。(つづく)
