援軍は来ない。
◇もうかなり昔のことだが、「633爆撃隊」という映画があって、私と友人は「ウェストサイド物語」のジョージ・チャキリス目当てで見に行った。第二次大戦中の英国空軍の話で、ナチスドイツが開発した恐ろしい新兵器(あ、今ネットで確認したら、ただの燃料工場とあったけど、そうだったっけ?)を空爆して壊滅させなくてはならないのだが、それがフランスの海沿いのどっかの崖の下側の、もうどう考えても爆撃しようがない場所であるため、爆撃機は空中サーカスのような飛行をして爆弾を投じなければならない。実際リーダーの主人公はたしか戦前はサーカスで空中飛行のショーをやってた人ということになっていた。なおチャキリスはドイツかフランスかどこかヨーロッパの地下組織の人で、情報を持って英国に来て、また帰って活動してる間にナチスにつかまってしまうから、爆撃には参加してない。かわりに、というのも変だが、彼について来た妹が主人公と恋に落ちることになっていた。
地形の似たところを探して、さんざん訓練もしていよいよ現地に向かうのだが、地上からもフランスのレジスタンスの人たちが攻撃をかけてくれることになっていて、だから対空砲火はかなり軽減されるはずだった。
したらば、まあ当然話の筋としちゃそうなるわなって感じだが、攻撃直前にレジスタンスのアジト(隠れ家)が見つかって攻撃されて、全員が殺されてしまう。なので、目標に向かって飛行中の633爆撃隊には「レジスタンスは壊滅、地上からの援護はない、対空砲火は無傷、引き返してもかまわない」みたいな無線が入る。しかし彼らはこれも当然そうなるわなの展開で「今さらやめられるかー!」みたいな感じで、突っこんで行く。と言って、日本の特攻隊のような悲痛さはなく、むしろにやっと笑って成功を信じて強行する、みたいな感じだった。
冒頭、タイトルバックに、それらしい時代めいた爆撃機が二機、あっちこっちから映し出される。実際にはもちろん10機近く飛んでることになっている。私と友人はバカにして「きっと撮影用に二機しか作ってないんだね」とささやきあってたら、まるでそれが聞こえたかのように、いきなり5、6機映し出されたので、口をつぐんで笑いをこらえていたものだった。
爆撃の場面はなかなかの迫力で、命中させる者、撃墜される者、体当たりして炎上する者と、それなりに描き分けられて効果的だった。その後、いくつかの戦争映画で、その場面が使いまわされているのも何度か見た。何しろはまって数回見たから、場面をしっかり覚えているので、「あ、これ、あそこやん」とすぐにわかってしまう。
それほど、よく出来た場面だったのだろうし、面白い映画で人気もあったのに、最近ではDVDでもお目にかかれないのは、どうしたことか。ちょっと淋しい。
◇何でそんなこと思い出したかって言うと、私は今、田舎の家を片づけていて、大きな家具を人にもらっていただいたり、今いる家に運んで来たりしているのだが、昨日、こちらに持って来るはずだった大きな家具の、ほぼ全部をめでたく移動させて、運びこんだ。おかげで家はぎゅうぎゅうになり、また、まっすぐ歩けない障害物競走のような毎日が始まっている。
本当は大型の古い家具のすべて(洋服ダンスや書棚や茶棚や)を持ってくるように予定していたのですが、とても今の家にはいりそうもないから、置き床を一つ持って来た以外は、そのまま田舎に残しました。
でも、こういう予定って時々刻々変わるもんだから、前の予定の残像も残っていたりするのよね。
なーんとなく、茶棚や書棚が来るような気がしていて、こまごましたものは、そこに詰めればいいや、食器類も、なんて今でもまだどっかで思ってる。
でも、それが来ないってことは、細かい荷物の入れ場所がはなはだしく不足するかなって実感が、ようやく生まれ始めた。で、何の脈絡もなく、思い出すわけなのよ、「レジスタンスの援助はない、対空砲火は無傷」っていうあの無線のことを(笑)。
◇昨日田舎で荷物を積み込むとき(例のクマもちゃんと持って来ました!)、昔ほんの出来心で買って、ほとんど使ってもいなかった小さいドレッサーを思わず「それも持って行きます」って言っちゃったのも、なんかもう、ちょっとでも物入れる場所がほしかったための、予定外の行動だった。あれだけ精選吟味して水ももらさぬ計画のもと積み込みを行っていたのに。
そして持って来てみると、はたして案外大きくてどこにもはまらない。まあ何とかするしかないけど、買ったのも持ってきたのも出来心で、特に好きでもないし、思い入れも思い出もないのに、こんなに縁の切れない家具っていうのも珍しい。
◇今日から非常勤先の大学で後期の授業が開始だったんですが、なーんとなく20~30人の受講生だろうと思って資料も25部しか印刷して行かなかったら、多分時間割の関係なんだろうが、教室いっぱいに学生があふれていた。当然、資料は足りなくて来週追加補充することにした。
最前列の学生二人が、「風と共に去りぬ」の原作(映画じゃなくて)や「ダルタニャン物語」の全巻を読んでいたのでちょっとびっくりした。しかし最後に書かせた小レポートでは「自分はまったく本を読んでいないので、皆について行けるか心配」と書いている学生も何人かいて、まあ当然だが、さまざまな学生がいるのだろう。
◇荷物の運びこみが一段落したので、猫のカツジはやっと安心したのか、落ち着いて眠っている。