1. TOP
  2. 岬のたき火
  3. 日記
  4. 昔のよう

昔のよう

NHKも民放も、あいかわらず戦争や原爆関係の良心的な力作を、放映しつづけている。おかげでなかなか寝るヒマがない(笑)。あまりにもお粗末で突拍子もない核武装論や戦争肯定論がまかりとおるから、さすがに何とかしなければと思う人たちが増えたのだろうか。

先日の民放のニュースでは治安維持法の特集をやっていて、日本共産党や特高について、まともに普通の紹介をしていた。女性を全裸にして性器を焼く拷問などもちゃんと紹介していた。もっとも私が知っているのでは、燃やした新聞紙を押しつけるとかいう話も多かったが、煙草の火で焼くという例を紹介していて、それなりにひかえめにはしていたかもしれない。

各界のエリートを集めて戦争の結果をシミュレーションしたら、どうなっても日本が壊滅的に負けるという結論しか出ず、東條英機はじめ軍部や政府はあてがはずれて、その調査結果を隠して抑え込み、戦争に踏み切って、予測通りの結果になったという「総力戦研究所」の話は、私も「虎に翼」のドラマで初めて知った。子どものころからそれなりに戦争関係の情報は得ていたつもりだったから、多分戦後すぐの私の子供時代は、この話はまったく一般に知らされてなかったのだろう。それにしても、自分たちが緻密な調査で出した予測が無視されて、その結果予測通りの悲劇が実現していくのを見るしかなかった人たちの心とはどんなものだったのだろう。まるきりギリシャ神話のトロイのカッサンドラではないかいな。本当にただ救われない。

天皇が戦争終結の意志を示し、それによって政治家たちも動きながら、判断ミスやら予測の甘さやら、ソ連とアメリカをはじめとした各国の綱引きから、事態は遅々として進まず、ついに原爆投下にまで至る細かい過程は、いろんなというかあらゆる意味で、ホラーというには余りある。あの原爆投下の現場の生々しい悲惨さを見聞きしたあとでは、その地獄と惨禍とが、政治や戦略の世界では別のさまざまな意味を持つこともまた恐ろしい。私はトランプはしんそこアホと思うし、それを支持する人たちも同様と思うが、彼らが「原爆のおかげで戦争が早く終わった」とぬかすことばは、雑すぎるにしても、細かい意味ではいくつかの真実も含んでいるかもしれない。

とにかく十分な調査と、まともな良識と、人間や未来への信頼と愛に支えられた、これらの番組をいくつも見ていると、ふっと昔に帰ったような錯覚に陥る。田舎の家で祖父母や母と、モノクロテレビの映像を熱心に見ていたころが、ひとりでによみがえる。あのころはチャンネルはNHKしかなく、番組の多くがこんなきちんとした姿勢の報道番組だった。
 多分アベ元首相が嫌悪し憎悪し、全力でたたきつぶそうとした戦後レジームとは、こういう視線と姿勢だったのだろうな、とあらためて実感する。

ところで、朝ドラ「あんぱん」は、喬が漫画の創作に四苦八苦し、大河「べらぼう」の歌麿の苦悩と時を同じくしているのも偶然だろうけど何だか面白い。そして、前からよくほめられているが、蘭子役の河合優美さんの演技というか存在感が、今またすごい。ヒロイン三姉妹はそれぞれがんばっているが、戦時中から戦後への変化、身体にまとわる空気感のようなものを、一番がらりと変えながらしかも本質は昔のままに見せているあたり、蘭子が一番図抜けて時代を体現して見せてくれているようだ。

いずみたくと永六輔をモデルにした二人の登場と、ミュージカルの制作もまた面白かったのだが、その話はまた(笑)。

先日はちょっとだけ庭を攻めて(笑)、横庭の一角の草むしりをしました。以前の草むらを見てないとどうってことないでしょうが、これでもすっきりしたのよ、ほんのちょっとはね。

Twitter Facebook
カツジ猫