映画「ミッション 8ミニッツ」感想(2)。
さらにだね、主人公は八分の間に犯人を見つけなくてはならず、最初はそれに間に合わず、何度も何度も同じことが起こって、向かいの席の若い女性(彼はだんだん彼女を好きになる)をはじめ、乗客すべてが、もちろん自分も、事故にあって爆死する過程が何度も再現されるのだが、それはある意味地獄にはちがいないが、しかし一方で私は見ていて何となく「楽勝じゃん」と思ったのだよ。そりゃ、愉快な体験じゃないのは決まってるが、八分は何度でもやりなおしはきくわけだよね。(私、見おとしてるかな、何か説明あったっけ?)極端に言えば何万回でも、マジで。
だったら、いつかは犯人も見つかるさ。こっちは何度でもやり直せるんだもんな。8分×1万回でも、しらみつぶしに車内を調べていけばいいんだから、とか、えらいもう優雅な気分になった。
実際、主人公はくりかえし車内に戻って、同じ過程をたどるたびに、賢くなり、対応がうまくなり、問題点を見い出して行く。そして、犯人を見つけるだけでなく、限られたつかの間、車内の人たちを幸福にし、最高の世界をつくるには、どうしたらいいかまで発見する。
もし、やり直せたら、と私たちはよく思うし、でも「タイムマシン」の映画がそうだったように、どうやったって運命は変えられない。でも、この映画では、同じ過程をくり返しながら、人は賢くなれるし、事態を改善できる。それって最高にうまい話で、「聖☆おにいさん」のマンガを読んだばっかりだからつい連想するけど、どういうか、輪廻からの解脱ができるようなものじゃん、まちがってるかしれんけど。
どう考えても、この映画は、とり返しがつかないことなんかない、と言ってるにひとしいし、くり返して行く内にものごとはよくなる、と言ってるにひとしい。そして、ある意味悲惨の極致みたいな、自分の肉体の残骸に、がんばれよー、と脳天気なぐらいに前向きで楽観的なエールを送っている。
このあまりにもの強さと明るさは何なんだ。人類だかアメリカだかの底力か、それとも末期的症状なのか。願わくばマジで前者であってほしいよ。何だかだって、私はこのどーしよーもないほどの前向きさが、そんなにキライじゃないからだ。