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映画「ミッション 8ミニッツ」感想(4、これでおしまい)。

あとひとつ、と言うのはですね…。

これ、デンゼル・ワシントンの「デジャヴ」の時も思ったんだけど、あの映画の設定も今回のに似てるんですけどね、過去に起こった事件に戻って、それを解決して事件を防ぐ、みたいな筋が。
以下は「デジャヴ」もネタばれよん。

あっちの映画でももちろん犯人はつかまり(だったっけ)、被害者は救われ、ハッピーエンドなんですが、私はそういう話のとき、一度起こった、その不幸な場合の展開というかパラレル・ワールドというか、それが、そこにいた人たちがどうなったか、ひじょーに気になるのです。きれいに雲散霧消して消えちまったと思えないんです。

あの映画の場合、被害者の女性は犯人にいたぶられ、拷問されて殺された。
そういう過去の事件を未然に防いで、被害者の女性=ヒロインは無事で傷つかず、にっこり笑って生きているわけなんですが、でも、私はひょっとどこかのパラレルワールドで、別の世界で、苦しんで死んで行った彼女が、やっぱりいるんじゃないかって、どうしても思ってしまうのです。

だとしたら、彼女は苦しいだけじゃなく、どんなにさびしくて哀しいだろうと思ってしまうのです。誰からも忘れられて。なかったことになった世界の中で、犯人に苦しめられて。
何もできなくても、私はそこにいてやりたい。みじめで、むざんな姿でも彼女を見捨てずに、忘れずに、見つめていたい。救えなくても。何もできなくても。

あの8分間のくりかえしが、くりかえしただけ現実に存在したのだとすれば、その分だけ、爆発で死んだ人々と、苦しんだ人々が生まれたのだとすれば、私はそのひとつひとつの世界を忘れたくない。あったものとして、大切にしたい。

そう思うことは、あの映画の伝えるメッセージと反対のようで矛盾はしてないと思うんです。
何べんでもくりかえせるなら楽勝じゃん、と私が安堵したのも事実です。それはゲームで死んだ人が生き返るから、現実の殺人も気軽にやってしまう、と批判されるいまどきの子どもの心境と通じるとこもあるのかもしれない。

でも、その一方で、あの映画は、あっという間にすぎてしまう、何てことない8分間の、かけがえのない大切さと偉大さを伝えてもいた。
そして、どんなにくりかえせても、とにかくいっぺん起こってしまった8分間はやっぱり、ただのひとつも、見捨てられないと思う私の感覚は、それと重なる感覚でもあるはずです。

何度くりかえしても、どこかちがう8分間。あっという間にすぎるし、どこにでもあるけれど、他のどの8分間ともちがう8分間。それは人間の一生でも、惑星の一生でも基本的には同じで、愛しようと思わなければそれだけの、でも大切にしようと思ったら、限りなく豊富で貴重なものなんだから。

それにしても、この映画の批評や感想に、時間旅行やパラレルワールドを科学的に語ろうとしているものの何と多いこと。別にいーけど、そんなの、この映画じゃ、ただの小道具で、まったくどーでもいいことなのになー。もったいないといおうか、ご苦労さまといおうか。ふかひれスープを味わう場所で、イルカ漁の是非を議論するぐらい見当ちがいもいいとこだと思うぞ、私は(なんか、このたとえも、ちがってる気はするけどさ)。

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カツジ猫