映画「ライフ・オブ・パイ」感想(つづき。これでおしまい)。
(ひさびさに長い感想ですね。前のつづきです。)
◇多分、あまりトラにこだわっちゃいけないんでしょうね、この映画は。それは、あくまでも少年の成長や放浪や世界観を描く背景や小道具の一つで、トラの映画と思っちゃったらまずいんだろう、きっと。
でも、そう思うと逆に、この映画の全体がCGっぽく見えて来るんですよ。実際、私は冒頭の動物園の動物たちの動きや姿態のあまりの美しさに、どういうカメラマンがとったんだと息をのんでいたのですが、もしかして、あれもいくらかはそうなんだろうか。すべてがムダなく、きれいすぎました。
そして、そう思うと、もう実写の場面もすべて、そう思ったら前の「ブロークバック・マウンテン」もだけど、映画のすべてがCGっぽいんですよ。完璧でムダがなくて、計算しつくされていて、でもなんかこう、のめりこめない。
◇好きなんですけどねー、あの市村正親にちょっと似た大人のパイも、「きちんと別れを言えなかった悲しみ」も、トラの一番最後の映像も、どっか人を食ってるし、それでいて暖かいし、映画全体がまるで寓話か前衛劇か古典芸能のように象徴的でもあるし。
でも、もどかしいんだよなー。
えーいもう、はっきり最後に開き直って言っちゃうと、私は動物は好きだし、中でもトラは大好きだし、何べんでも見てあきないぐらいだけど、あのトラの映像は、劇場でもDVDでもなんかもう二度と見たくないなあ。気持ちが悪いし退屈しそうだし。
「いい映画だけど、悪いもんを見た」っていう、すごく奇妙な感想です。