映画「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」感想。
ええと、ほんとにこの題名だった? 確認する気にもなれないぐらい長いなあ。まあ、しょうがないんだろうけど。
映画は面白かった。ものすごくよくできていた。ほんとです。
土曜の夜で、字幕で2Dという一番客が少ないだろう部屋で、わりといっぱいだったし、他にも2部屋で上映してたから相当客は入ってたんだろう。出る時に前後の若い女性が「面白かったー」と言ってた。私の後ろの列では女性が友人に、「(あなたみたいな)原作ファンは、だめだろう?」と聞いていて、聞かれた方は「うーん、原作読んでるとやっぱりちょっと…でも面白かったけど、でも」とか迷ってた。
まあ三銃士の映画や劇は、どれだって、「原作読んでたら、ちょっと」にはなるもんで、そもそも原作がそんなに厳密にしっかりしてる話じゃない(いい意味で)から、きちんと原作を愛して作ってくれてたらそれでもう上出来だ。
私は昔のオリバー・リードやチャーリー・シーンのころの三銃士は、その点であまり好きじゃない。「ヤング・ブラッド」もまるで買わない。一応題材にはしてるけれど、原作の精神やポイントをまるで理解してないと、少なくとも私は思うからだ(しつこく根に持つけど、「キング・アーサー」の原作を愛さないぶりも相当なもので、別にいいけど、私は今でもあの映画に出ていた俳優すべての出演する映画は俳優や作品の好き嫌いとは関係なく、基本的に見る気になれないし、見ていない。もったいない気もするが、まあ見ないですむ映画があるのは時間の節約にはなるなと自分を慰めている。それほどに拒絶反応が激しい)。
三銃士ものの場合、「仮面の男」は変化球のようでいて(偶然もあるかもしれないが)原作の精神をきちんととらえていたし、先日の博多座で見たミュージカルも、おお!とのけぞったぐらい、うまくツボを押さえて原作を利用していた。あれはもともと海外の演劇で脚本らしいな。そう聞いて納得した。日本であれだけのものが作れたら、それはもう見事すぎる、あまりにも。
まあでも、三銃士ものは、私のあまり好きじゃない昔の作品類の試行錯誤や蓄積もあって、今の状態が生み出されてきたのかもしれないから旧作類の悪口はあまり言わないようにしとこう。何だかだって言いながら全部ビデオは持ってるし(笑)。
今回の「三銃士」も、どうせ見に行くつもりじゃあったけど、オーランドとミラのポスターばっかりだから、まるで食指は動かなかった。既成の人気俳優で売らなきゃならない宣伝担当の苦労もわかってはいるつもりだったから、そう悪くはないのかもしれないとは思ったが、あまり期待はしないようにしていた。2ちゃんねるの掲示板で、「三銃士がちゃんと主役で活躍してた」と書いてた人がいたので、安心して早いとこ見に行く気になった。
その通り、三銃士とダルタニアンが主役です。オーランドとミラも魅力十分ですが、分を知った立派な脇役に徹して、決してでしゃばってバランスをくずしたりしていません。あたりまえのこととは言え、それに深く感謝し、あらためて、この二人が大好きになったぐらい、ひかえめです(あ、出ている間はめちゃくちゃ派手ですが)。
飛行船は出るわ、そもそも冒頭の誰かさんの登場から、もうひっくりかえって笑いこけたいぐらいで、ああわかった、もうこの映画何があっても驚かんでいいってことだな、と承知しつくしたのですが、しかし、そういう風にはちゃめちゃでも、原作の精神や冒険活劇はちゃんと生かしているし、「仮面の男」のダルタニアンの恋と同様、とんでもない設定でも、それがきちんと新しい解釈や趣向と、組み合わさって機能していて、無理がないどころか魅力を増幅させている。
まあまだいろいろあるんですが、つづきはまた明日。ひとつだけ言っておくと、この映画の最大の拾いもののひとつは、従者プランシェです。演技はもう、このクラスの人は皆うまいから当然として、その外見や顔と言ったら、「ああ、プランシェ、いたのー!?」と抱きつきたくなるぐらい、原作そのものでした。あ、正確にはちがうのかもしれないけど、幼いときから、なーんとなく私が想像していた彼のイメージそのままで、見てるだけでもう幸せになって、あー、ここはたしかに三銃士とダルタニアンのそばなんだと、手足をのばしてくつろぎたくなるぐらい、安心していられました。よくあんな俳優見つけてきたなー。
従者なんて、これまでの三銃士映画じゃ、記憶にも残らないぐらい、そもそもいないことも多かったんじゃないかしらん。こういうとこにムダな(笑)力をいっぱい使っているところが、もうこの映画すごく好きで、信頼できました。
まさかネタばれではあるまい。↓
ラストのシーンが何と他の誰でもなくて彼なんだよねー。「どうです、よかプランシェでしょうが」と監督がさし出して自慢してるようにも見えて、最後の最後でまた笑ってしまいました。とても幸福に。