映画「禁じられた恋の島」。
◇読み上げたばかりの小説「アルトゥーロの島」の感想をネットで見たら、私と同じにうっとりしている人もいる一方、けなしている人もいて、おかしかったです。
私はもちろん、ほめている人に大変同感するのですが、つまらないと言ってる人の言い分もわかるのよね。だって、これは本当に、筋や設定だけだったら、ありふれた、定番の、どうってことない話ですから。死ぬほどどうでもいいぐらい(笑)。
http://kdc.hatenablog.com/entry/20100920/p2
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2008/12/post-979c.html
でもそれが、文章や言葉で綴られると切ないまでの輝きを帯びて、本当にぐさぐさ心に触れてくる。風景も人の心情もすべてがまぶしく、鮮やかに。それが味わえなくてつまらないんだったら、もうしょうがないなあ。めんたいこをおいしくないと言う人に、おいしさを説明したってしかたがない(笑)。
説明して魅力がわかる場合もあるけど、これはそういう魅力じゃない気がする。
解説を読んだら、作者の人生がまた、小説以上に波乱万丈で、夫とナチスから逃げる途中で着替えか何か取りに危険を冒して家に戻って、そのとき小説の原稿も取ってきたとか、もういろいろ。そんな人生をそのまま書くこともしないで、小説を構築するって大変なことだ。行間の濃密な空気も、そうやって語られないままの体験や人生が生み出したものなんだろうか。
◇題名だけは私も知ってる、古いイタリア映画「禁じられた恋の島」は、この小説が原作と知って今さらながら驚き、ちょうどDVDが新しく出たところみたいだったので、さっそく借りてきました。モノクロなんだよね。色鮮やかな印象の小説なので、ちょっとものたりないかと思ったけど、その色彩が浮かび上がってくるような、いい映画でした。最初のタイトルがイタリア語ですけど、「アルトゥーロの島」と出てくるので、もう何かわくわくしました。
http://www.hananoe.jp/movie/meiga/meiga34.html
主役のアルトゥーロは素朴な目立たない少年のようで、どうかした時にとても美しい。継母のヌンティアータは、普通にきれいな女優さんなんだけど、原作の素朴さや力強さやたくましさが、ちゃんとそなわっていて、これもうれしい。
そして、少年が神のように恋い焦がれる父親が、いやーもう、今どきの俳優や映画にはないわと言いたいぐらい、ものすごく美しい人でした。だから少年の心境に、すごく説得力があった。
今の男優さんだと(女優さんでもか)、文句なく美しい人でも、何かちょっと、申し訳ないみたいな遠慮してるみたいな顔がいいだけじゃだめでしょうけどみたいな、そこだけでは勝負できないみたいな、ためらいや照れがあると思う。本人にも撮る方にも見る方にも。
男が強くていばっていて、かしづかれるのが当然だった時代の、臆面もない美しさが全身にあふれていました。あの小説の、継母が登場するまでの世界はそうですもんね。男だけの美と強さに支配された家と島、少年の心。それが問答無用にあらわされていて、感服しました。まあ最後にはその偶像が崩れて壊れて汚れて行くのも含めて、話がすごく、わかりやすくなっている。
◇あ、今日からは大相撲も始まるのか。私はラジオのパーソナリティーたちのアホなトーク番組もそんなに嫌いじゃないんですけど、何も考えないで聞き流しておける相撲や野球の実況は、ドライブ中でも家でもとても助かります。これからしばらくは楽しめるからよかった。そういう聞き方してるので、横綱三人が休場しても、別にものたりなくはありません(笑)。