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映画「福田村事件」続きの続き

井浦新さんと田中麗奈さんが演じる若夫婦の雰囲気もとてもよかったです。日本が支配していた朝鮮からの帰国者で、奥さんはセレブで、「銀座の若松」のケーキを食べたいと思ったりしている。

いやー、この事件はもちろん事実なわけですが、まるで作った設定のように、いろんな象徴的な要素が入っている。大都会東京の近郊の田舎のあり方とか、当時の朝鮮と日本の関係とか、今ではいろいろ想像できない関係とか雰囲気とかが、このご夫婦だけを見ていても、ひしひしと伝わって来る。

最後のせっぱつまった村人の攻撃直前で、行商人たちやこのご夫婦のいろんな説得や弁明に対し、在郷軍人会(この人たちも警察も、決して一枚岩じゃなく、慎重派もちゃんといて、そういう様子も見てるとわかる。いいかげんに動いてるというか描かれてる人が誰もいない)の人や村人が、どさくさまぎれにめちゃくちゃな反論をしてるんですよね。歴代天皇の名を言ってみろと要求して、ちゃんと言えたら、「こいつら行商人だから口上で覚えてるだけ」とか、都会帰りの奥さんには「あんたも朝鮮人やろ」とか、ほんと、差別の理屈って、いくらでも出て来る。人間て頭いいなあ(悪い意味で)と妙に感心する。

で、このご夫婦は朝鮮人への残虐行為や、そのトラウマを見せる役割をちゃんと受持ちつつ、現在でもいつでも永遠に存在する、よそものとか異分子とか、そういう役割もすごくよく見せてくれてる。
 この奥さんもご主人も、排斥はされてないけど、受け入れられてもまだいなくて、非常に中途半端に浮遊してるんですよね。自分たちも、どういう姿勢で村に対して行こうかとか、特に考えてもいない。旦那はもともとここの出身っていう油断?もあるし、奥さんもセレブののんきさが救いでもあり危険でもあり。ついでに二人の関係も、すべてが不安定。この感覚がすごい。心理劇として人間ドラマとして、これだけでも成り立ってる。

いい意味でリアルじゃないと言いましたが、この映画、時空を超えて象徴的な、まるで謡曲かギリシャ古典劇かってぐらい寓話っぽくて、あの良心的でたよりない村長さんなんて、もう民主主義そのものでしかない。あれ以上のことなんて、私は絶対、彼に要求できない。民主主義ってあんなもの、ついでに言うと平和憲法だってあんなもの。
 余談ですが、ネトウヨさんだか何だかが「平和憲法で日本が守れると思ってるのか」とか攻撃するとき、そのピント外れと土台からのずっこけに、私は煮えくり返るほど腹が立ち狂気のように笑いたくなるのね。平和憲法や民主主義で、日本や平和が守れるわけないじゃん。私たちが、平和憲法や民主主義を守らなくてはならないんですよ。何かんちがいしてるんだか。平和憲法も民主主義も万能薬じゃないしボディガードでもないんだよ。私たちが警護して介護して行かなきゃならないものなのに、何甘ったれたこと言ってんだか。

で、その村長さんといい若夫婦といい、演じる役者さんたちが、もう顔からたたずまいから、それにしっくりあてはまってる。説明抜きですべてが伝わるみごとさが、もう吹き出したいぐらい。やりすぎないし、それでいて、すべてが伝わる演技。

ちっ、また時間切れかな。もう一回で終わります。

こちらはネットで見つけた出演者のあいさつです。私はまだ全部見てはいないのですけど、とりあえずご紹介を。

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カツジ猫