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映画「127時間」感想。

◇DVDで見ました。映画館で見たかったのだけど、見そこなっちゃったので。
ジェームズ・フランコって主演の俳優は、「スパイダーマン」の時にわりとうまいなと思って見てたのだけど、あれとはまたイメージちがうこの難しい役には、、よくはまってました。
だいたい、ほとんど演技する見せ場がないんだもんなー。ずうっと岩の間にはさまったきりなんだから。それ言うなら監督だって(「スラムドッグ・ミリオネア」のダニー・ボイル)、どう撮るんだっていうようなこの題材で、ちゃんと映画にしてるのがすごい。それもどう考えても、相当のキワモノでグロにしかならんだろって話を、そんなこともなく、ちゃんと面白くサワヤカに作っているのが、なんかもう、すごすぎる。

「スラムドッグ・ミリオネア」では、ぐっちゃぐちゃの何でもありの満艦飾のインドの世界がにぎやかで濃厚な映像になってたけど、これは、その反対にすきっと濃密な青と白と茶色だけの山岳世界の、それも狭い岩の割れ目で、でもそれが、ちゃんと絵になってるのみか、雪の匂いや陽の匂いまでしてきそうな、リアルさがある。

青年は孤独で気ままで陽気な生き方を満喫していて、一人旅や一人の冒険をものすごく楽しんでいる。その充実感と幸せ感が、目もくらむほど伝わってくる。しかも人間嫌いなわけじゃなく、その気になったら、というほどもなく、ごく自然に行きずりの人ともいっしょに旅を楽しみ、楽しませる。いいなあ。私の理想だわ。ていうか、大抵の人の理想だろう、これ。

ただし、それがしっぺがえしを食らうのが、彼がこれだけとんでもない絶体絶命の状況にあったとき、彼は行き先を誰にも連絡してなかったから、救助はまったく望めない、っていう、何かもう、笑っちゃうような事実。まあ実際には複数で行動してても、行き先をひとに言ってても、こんな状態で死ぬことは、起こるっちゃあ起こるんでしょうが。

とにかくそのへんは、何だかもう、ひとごととは思えなくて、うーん、一人暮らしの人生を満喫している者としちゃ、いつもこうなる覚悟はいるなあ、家の中で事故にあうことだってあるだろうしとか考えてしまった。いつかテレビで、一人暮らしの女性がマンションのトイレに閉じ込められて餓死寸前で救出された事件のことを再現ドラマでやってたけど、あれに共通するもんがある。

まあでも彼もそのことはわかってるから、行き先言わなかったのをしまったとかは思っても、今さらくやんだりはしない。むしろ、そうだからこそ、絶対に助けは来ないから自分で何とかしようと思う。まず自分の腕をはさんでいる岩を、小さいナイフでこつこつ削る。ああ、私でもそうするなあと思って見てたが、このように、地道な努力を落着いてせっせと続ける主人公が、変に大げさでなく感傷的でもなく、まるで日常の家事をやってるように描かれて、自然に感情移入してしまう。自分がそこにいるような、と言うのは言い古された言い方だが、この場合ほんとにそんな気分になるのだ。

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カツジ猫