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母の思い出話

老母(九十一歳)が老人ホームに入居して半月以上が過ぎました。皆さんに親切にして貰って大いに満足して居る様で一安心です。
昨日行って見ましたら、「自分の一生を回想して居た」と言って居ました。中国で使用人も多く使って「天皇の様な暮し」をして居たのが、日本に引き揚げてからは食物にも事欠く生活になり「賠償も何も無かった事では重光さん(当時の大臣)が中国に詫びたからだと恨めしかったけれど、矢張り彼は正しかった。日本は中国では本当にひどい事をしたんだから」と繰り返して居ました。

其れから「××に住んで居たAさんは女たらしだったから、中国の女の人達に其れは酷い事をして来たと有名だった。△△に居たBさんは中国のおばさん達を家に閉じ込めて火を付けたと話して居た。親戚のCさんは、中国人を一列に並ばせて一方から鉄砲で撃ってどこまで弾が通るか皆で試したが、『自分は其れだけはどうしても出来なかった』と言って居た」等、具体的に話して居ました。××や△△には実家の近くの集落名が、ABCには人の名前が入ります。私が知って居た人も居ます。今はもう皆亡くなって居ますけれど。

母に「今の若い人の中には、そんな話は中国の作り話だと言って居る人が多く成って居るよ」と言うと、「へえ、昔は普通に誰もがそんな話をして居て、皆知って居た事なのに」と不思議がって居ました。

母の言う通り、昔は此の様な戦場での強姦や殺戮は一種の手柄話として田舎の炉辺で老人達が普通に語って居た筈です。
愛国心を持ち日本の伝統文化や古来の礼儀を尊重するなら、此の様な老人達の回顧談に耳を傾けなくて何としましょう。日本を愛する、誇りを持つと強調する方々が此の様な伝統文化に無関心なのは不思議な事です。

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カツジ猫