沖ノ島の世界遺産登録について(2)
数年前に吉野の大峰が女人禁制のまま世界遺産に登録されました。インターネットで少し見ただけですが、その際、女性団体が強い抗議を行なっている模様です。沖ノ島の場合にも結局はそうやって宗像市以外の団体や個人から抗議が行なわれるでしょう。その場合、私はその抗議行動に同調せざるを得ないでしょうし、私の他にもそういう人はいるかもしれません。その一方で女人禁制を問題ないと考える人も当然いるはずで、問題が煮詰まって充分な時間もとれない段階になって、感情的な激しい対立や混乱が市民の間に起こることは充分に予想されます。時間切れや地域の一体化を理由に、その対立や混乱を押しとめれば長い不信と深いしこりが地元に残ることは必至です。少なくとも宗像市は私にとってだけでなく、多くの人たちにとって今ほど住みやすい場所ではなくなるでしょう。
この点での宗像市や福岡県の見通しは失礼ながら、とても甘いと思います。議論を誘いそうな情報を極力伏せて運動を推進し、既成事実を積み上げて「もう後戻りができない」と説得する方法が、どんなに危険で混乱を招くか、最近の原発をめぐる問題でも私たちは痛感しているはずです。
私は沖ノ島の世界遺産登録には反対ですが、もしこれを成功させようと思うなら、市民を信じて女人禁制の場所を世界遺産にすることについて、充分な討論と意見交換の場を設けることが絶対に必要です。討論が深まらない内にアンケートや市民投票で拙速に結果を出すのではなく、誰もが自分の考えを持てるような学習や話し合いの機会を設けるべきです。それでは、うまく行かないだろうと思うなら、そのようなことは初めからするべきではありません。