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沖ノ島の世界遺産登録(続き)

◎さて、昨日は昨日で、「沖ノ島」という写真集を出版したカメラマンの藤原新也さんと、文章を書かれた直木賞作家の安部龍太郎さんのトークセッションが福岡天神のイムズホールであるというので行って来ました。本も買ってサインももらって来ました。なかなか面白かったです。

お二人はどちらも、日本の伝統を壊してほしくないから女人禁制は守って行かなければならないというお考えで、そこは私とまるっきり正反対なのですが、だからこそでもあるのでしょうか、世界遺産登録には消極的で、藤原さん(感性で生きていると自分でおっしゃっているだけあって、大変すっきりとまっとうなお話でした)は「市長には申し訳ないんだけれど、僕は世界遺産とオリンピックとミシュラン(の星のランク付け)が大嫌い。何でタイヤの会社が料理のランクを決めるの。あんなのはどれも西欧の思考で世界を切るものでしかない。世界遺産なんかも、アジアのものをヨーロッパが何で選定するのか」とばっさり言われました。

トークセッションは4時で終わるはずだったのですが、お二人がそんなことを言われたので、司会の女性アナウンサーがあせったのか、「もう一言、もう一言」と、しきりに世界遺産登録肯定につながる発言を引き出そうとして、30分ほどオーバーしました。

しかも、その最後のあたりで、安部さんが、これからの日本で必要なのはエゴをなくした生き方で、などということから「原発は絶対にだめ」と発言され、藤原さんも「チベットの山巓には、何千年も開かれないままの神廟がある。人間には開けていけない場所がある。原発はまさにそれで、人間はウランを扱ってはいけなかった。自分は何十回も福島に行って、そういう禁忌をおかした結果の場所を見、その後、沖ノ島でそういう禁忌が守られている場所を見て、感じることが多かった」と、お二人そろって「原発は絶対にいけない」という発言をなさったので、司会としては、ますます、そこでは終われなくなったんでしょう。

「ああ、もうそこでしめとけばカッコいいのに」という、いい発言をお二人がなさっても、まだまだずるずるのばすので、藤原さんは「もう、しゃべっちゃって話すことないよ」とまでおっしゃるのに、まだ聞こうとしていて、思わず私は口の中で「しつけえよ」と言ってしまったぐらいです。(笑)

私の勝手な空想ですが、藤原さんは、何とか世界遺産に肯定的な発言をしないと終わりそうにないと思われたのか、「誰も行けない世界遺産というのは面白いかもしれない。空想しかできない場所は、人の感受性をとぎすまさせる」という風に言っておられて、まあそれでやっと司会もあきらめたようでした。(あくまで私の想像です。)

◎会場は満席で、挨拶をした市長も喜んでおられたようです。私は行く前から、この天神のどまんなかで、女人禁制を公認すると公言する会を催すなどと、宗像市もRKB毎日もその意味がわかっているのだろうかと心配していたのですが、最近ではなかなか誰も言わなくなった「原発反対」を、あれだけの人の前で立派な作家とカメラマンが、立派なことばで、しかも沖ノ島の意義と結びつけて述べたこと、更に「世界遺産は西欧思想の傲慢さ、自分は反対」という見解も明確に述べられたことは、なかなかよかったのではないでしょうか。

女人禁制にしても、お二人の姿勢は明確でごまかしもないから、わかりやすいです。安部さんは、予想もしていましたが大相撲の土俵の例などひかれながら、「女人禁制はいけないということが世界遺産になると言われたりするだろうが、そこは何とかよいように解決してほしい」と言われていました。藤原さんは「女人禁制が問題になるだろうが、そういうのも西欧思想の押し付けで、自由・平等・民主主義というのも西欧の基準で、民主主義なんてろくなものではない」と明言しておられました。

女人禁制の廃止を主張している発言なんて江戸時代の紀行にもあって、西欧思想や民主主義に限ったことでもないですとかいう、野暮な話はおいといて、(笑)こういうはっきりして一貫したお話は、お二人ともに、聞いていて快かったです。
市長がこういう話をどのように解釈して今後の方向に生かされるのかはわかりませんが、少なくとも女人禁制を貫くなら、自由・平等・民主主義も否定してほしいですし、本当にお二人の、そして私の懸念を払拭するためには、世界遺産の登録はやめて、従来通りひっそりと地域で守って行けば一番いいのではないでしょうか。

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カツジ猫