泣く女、幸せな家庭
「虎に翼」、最近もう花江さんがずんずん嫌いになって行って、顔を見るのも声を聞くのもドラマを見るのもいやになりそうなので、これではまずいと、なぜ嫌いになって行くかの理由を分析することにした。好き嫌いの大半がそうであるように、どうせ大した理由ではなく、どうせ理不尽なものだろうから。
時間をかけてはいられないから、とっさに手っ取り早く考えつくと、一番大きいのは寅子との最初の話し合いのときに、彼女が泣いたことだよな。私はそもそも現実でも公私を問わず、話し合いで泣く人間、もしかしたら特に女は、もうそれだけで自分の中の「ちゃんと扱うべき人間」の範疇から即外してしまうから。もちろん表面の態度は何も変えないよ。特に意地悪も何もしないよ。でももう「まともに相手する人間じゃない」「時間をさいて考える対象じゃない」箱に放りこんでしまうから。こういう人のことは気にしない、悩まないと決めてしまった分、気軽におつきあいできて、かえって楽しい側面もあるけど(笑)。
もうひとつは、これこそもう、ただの趣味で理不尽なんだけど、視聴者がユートピア、パラダイスみたいな印象抱いてるみたいな(制作者の意図はまだよくわからん。もしかしたらちがうかもしれない。そういう点ではあのドラマ、油断できんもんな。笑)、あの花江さんの作ってる幸せな子どもたちの家庭の雰囲気がほんともう、好かんのよ。これは「若草物語」のジョーが作った子どもたちの施設プラムフィールドが、どうしても気味が悪くて好きになれなかったのも同じだろうし、ひょっとしたら黒柳徹子さんのトットちゃんのいたトモエ学園もどうだったんだろうと思うと、そこはちと自分も恐いけど。(いや、多分あそこはまた、ちょっとちがうと思うけど。)
今でもありあり覚えてるけど、遠い親戚の人とかが来てわが家に長期滞在とかして、ふだんはそんなに仲良くもない、自分の家族が和気あいあいといい家族、幸せな家庭をみごとに作って見せているのを見ていると、幼い私は数日もしない内に、苦しくて息ができなくなって、ふだんのそっけない、冷たい、けんかも多い家庭環境がなつかしくて、死にそうになっていた。それは職場でもサークルでも学校でも皆そうで、「私たち仲いいもんねー」「ここは誰もが幸福だもんねー」オーラ満載の組織やグループや教室や世界というのが私は本当に、本当に、耐えられない。まあ、カルト集団に洗脳される心配だけは、ひょっとしたら皆無かもしれない。知らんけど。
花江さんは、そういう意味では私の感覚では被害者じゃないし、寅子との関係もふくめて、寅子と同じぐらい加害者だし失敗者だ。それを全然自分でも自覚してなくて最後には泣くんだろ。寅子もつくづくできすぎている。私なら、子どもの前だろうが何だろうが、花江さんをののしり返して、ぶち切れて、どなり散らかす。少なくとも、まずは、あんな気持ち悪い人間は家族でも親友でもないと心に決めることから始める。何もかも、そこからだ。
まあ、もうちょっと考えてみますけど(笑)。