浮かべば有罪、沈めば無罪。
◇庭には、昔、叔父がくれたカンナの花が咲きだして、真っ赤な炎がいくつも燃えているようです。三毛猫シナモンの墓の上の、やたらと伸びた金盞花もつぼみをつけて、どうやら花を咲かせる気と見えます。
隣家との間には、今ごろになって、いっせいに朝顔が葉を広げはじめました。この調子ではものすごい量の花になりそうです（笑）。スイートピーはもう終わりましたが、よく見たら、いっぱいさやがついて、実が入っているようです。何だか庭は大賑わいと言ったところです。
◇パソコンの調子はあいかわらずぱっとしません。明日あたり本当にしかるべき店だか人だかに聞いてみようと思っています。
◇首相は、一昨日だかの会見でまた、「自衛隊ができる時も戦争になると反対する人が多かったが、実際にはそんなことなかったじゃないか。今回も同じで騒ぐことはない」みたいなことを言ってるようですね。
もしかしたら自衛隊じゃなくて安保の話だったかもしれないけど、同じようなことばかり言うので、もうどっちでもいいわ。要するに、「反対は多かったけど、心配したようなことは何も起こってないじゃないか。今回だって反対してる人の言うことはそれと同じで、聞くには値しない」って理屈です。
彼のこの言い方を聞くたびに、私はものすごく違和感を感じるのです。内容以前に、このような論理や考え方をすること、それを公言する神経に、ひどく不可解な、奇怪なものを見せられた気になる。
まあ一国の首相が堂々の記者会見で言うぐらいですから、こんな違和感や、異様な感じを受けないで、ひょっとしたら納得する人もいるのかもしれないけど、だとしたら、私はそういう人とも、何かまったくちがう世界に生きているような気がする。意見のちがいとか、主義主張のちがいとか、そういうこと以前に。
◇私はもちろん、これまでいろんな政治的な問題について、まめに反対したり支援したり行動したり思考したりしてきたわけじゃない。関心をいつも持って見守ってきたというほどじゃない。それは、たとえば日出生台の基地を見張り小屋建ててずっと見張ってきた人とか、水俣病の被害者にいつもよりそって来た人とか、そういうように、何かを続けたり対決したり押し返したりしつづけて生きてきた人たちに比べれば、ほんとに、何もして来なかった。
それでも、戦争が起こらないように、自由が奪われないように、差別が起こらないように、いつも気にして、最低の発言や行動をしてきた。それがどんなにささやかなことでも、そうなるまでに、そうするまでに、長く、深く、苦しんで、迷った。
◇立場や思想のちがいがあっても、そういう姿勢を少しでも持ったことのある人なら、首相のああいう発言は絶対にしないのじゃないだろうか。そういう発想が、そもそも出ないのじゃないだろうか。
何かを、自分で責任を持ってやろうとしたことのある人なら、ああいう考え方はしないというか、できない。
もしかしたら首相は、そういうことを考えたりしたりしたことがないのじゃないだろうか。自分で世の中を動かすという決意や信念を主体的に持ったことがないのじゃないだろうか。
世の中の動きや世界や政治の動きが、いくつもの勢力の力のせめぎあいから生まれ、ダイナミックな力関係で、それが刻々変化して行く。そういう実感を肌で感じて生きている人からは、あの発言は生まれない。この人（首相）の見る世界は、冷たくて、硬直していて、単純で、薄っぺらだ。そうしか世界や周囲が見えない眼しかこの人はきっと持っていない。
◇ま、とにかく、ささやかにでも何かをしてきた私のような人間は、首相の「反対があったけど何も起こらなかったから、それは安全だった」的な言い方を聞くと、飢えて死ぬまで貧乏だったことがわかってもらえない貧困層の人とか、ストーカーに刺し殺されて初めて危険の程度が理解してもらえた被害者とか、そういう人の気持ちを思い浮かべる。更に発展して、中世の牢獄で、無実を証明するのに水に投げ込まれて溺れ死んだら潔白、浮かんで来たら有罪確定で死刑になることになってたという、あのすんばらしい論理を思い浮かべてしまう。反対した人々の心配が実現して、正しいと証明されたらそれは破滅ということだし、実現しなかったら（必死になってさせなかったら）まちがっていたということで無視される。冗談じゃない。
そして一番、目の前が暗くなるのは、こんなあほらしい理屈しか記者会見して言うことが首相にはないらしいことだ。砂川判決ももう「理由じゃないです」とか政府の誰かが言ってたし、どうなってるんだよ、もう完全に手詰まりじゃないか。
◇これも、ごらん下さい。「渋谷のデモに行きたかった！」という若者たちの声をまとめたものです。
