1. TOP
  2. 岬のたき火
  3. 日記
  4. 知らせるという武器、知るという防衛(九条の会チラシ原稿)

知らせるという武器、知るという防衛(九条の会チラシ原稿)

 北朝鮮のミサイル、尖閣列島や竹島に関するニュースが流れるたびに、「だから軍備を増強しなければ!」という声が高まります。突然隣国が攻めてきたら、どうやって対処するのだと皆が不安にかられます。
 そんな時に私が思い出すのは、「ホテル・ルワンダ」という映画のことです。

 もとをただせば白人の人種差別が原因ですが、アフリカで異なる部族どうしが激しく対立し、ついにある日突然、ひとつの部族が他の部族を襲います。主人公の男性は自分の職場である「ホテル・ルワンダ」に避難して来た人々を保護しますが、ホテルもいつ襲われるかわかりません。守ってくれる軍隊も命令により引き上げてしまいます。
 息づまる毎日の中で、主人公を初めホテルに避難している人々が、何よりも期待するのは「世界がこのことを知ったら放ってはおかないだろう」ということでした。しかし、この大虐殺(夜道を車で走るにも道路の死体を轢きながら進むしかないような)が他国では、まったく報道もされていないということを知って、彼らは絶望するのです。

 私も当時、アフリカでそのような事態が起こっていたとは少しも知りませんでした。その前の、ヨーロッパで続いていた長い悲惨な民族紛争についても、ほとんど知りませんでした。ポルポト政権によるカンボジアの虐殺についても。アフガニスタンについても。イラクについても。きっとその間、私は新しい服の値段や、プロ野球の勝敗に一喜一憂していたのでしょう。

 国境や局地や現地で軍隊のできることには限りがあります。理不尽な侵略や紛争を未然に防ぎ、一刻も早く終結させるには、世界がどれだけ、そのことに目を向け、関心を持ち、声をあげてくれるかが何よりも重要なのです。
 何が今起こっているかを世界に伝え、訴えることは、ミサイルや戦車をくいとめる力を充分に持ちます。そして、そのためには、私たちもまた、世界で何が起こっているのか、知ろうとしなければなりません。ぼんやりとテレビで知らされるのではなく、自分から遠い国の人たちの運命に関心を持って見守っていれば、私たちに何かあったときの伝え方もまた、わかるはずです。
 被災地を初めとした国内のことですら、充分には伝わらず、選挙の投票に行くことさえおっくうと多くの人が感じている今、それは難しいことかもしれません。けれど、それができなかったら、どんなに強力な軍隊があっても、きっと日本は守れません。

Twitter Facebook
カツジ猫