砂利の上
三毛猫シナモンが死んでから、彼女と同じころうちに来て、これまであまりかまってやれなかった猫たちを、もっとかわいがってやろうと思っているのですが、なかなか時間がとれません。
皆、まだ元気ですが、シナモンとほぼ同い年なので、急いでかわいがっとかないと、いつまたどうなるかわからない。
気が強くて他の猫をいじめるので、二階で暮している元気いっぱいのロシアンブルーもどきのグレイスや、雌なのに大きめで多分洋猫の血がまじっている白黒猫のマキや、子猫のとき犬にやられたらしく後脚が一本ないけど元気な美猫のバギイです。マキは内気すぎて家の中でノラ猫と化し、全然人に慣れていません。バギイも似たようなものでしたが、彼女はおやつの「乾しカマ」になぜか目がなく、これで私になつきました。グレイスはどんなに放っておかれても、いつもものすごく人なつこく甘えまくるパワフルな猫です。
さしあたり、マキとグレイスが出られる金網の中の庭(カツジ猫がいるのとは別です)と、その奥の空き地を、きれいにしてやらなければと思ってもう数か月。そろそろ草も本格的に伸びはじめそうで、来週あたり何とかしなくては時間切れになりそうです。
先日実家に帰ったときも、母のいた新しい方の家の前庭で、草取りをしたのですが、三分の二ぐらいで日が暮れました。古い母家に住んでもらっている若い人も草取りを手伝ってくれました。彼もふだんから目立つ草は抜いてくれているようなのですが、私が一本残さず抜いているので「すごーい。日本庭園みたいにきれいになってる」と感心してくれました。実は砂利がしいてあるので、雑草をつまんで抜くと、ずるずるずると抜けてくるのがすごく面白くて、どんな小さなのも見逃さず抜く方が、達成感もあって面白いのです(笑)。
二年ほど前に建てた、今のカツジ猫がいる新しい小さい家も、周りは砂利です。誰があるいても、文字通りじゃりじゃりすごい音が響くので、防犯にはたいそういいのですが、靴によっては裏底の溝に砂利がくいこんで困ります。
私はこちらの庭にはいっさい花を植えず、草一本ないようにしていたのですが、最近怠けて、小さい草がちょろちょろ生え出しました。
すぐ取ってしまえるのですが、小さい茶色のカタバミみたいな草が丸く広がっている上に緑の長い草が数本ひょろひょろ伸びている、直径五センチにも満たない場所が、上から見ると箱庭のようで何やら楽しく、思わずそこに小さい馬か牛かおいてみたくなったりして、ついそのままにしています。
今日、街で母の日のプレゼントを買うついでに、小さな動物や恐竜がおいてある売り場で、思わずシマウマとチーター(かな、あれは)を買ってしまいました。明日、草の中において写真をとって、それから草を全部むしろうと思っています。金も時間もないと言ってる人間のするこっちゃないですねー、つくづく。
元いた大学に週一で非常勤に行ってますが、ずっと続いていた工事が終わって、図書館周辺が見違えるほどきれいになっていました。学生のためにも喜びたいところですが、この四月から講座の研究費がばっさり半額に削られたという話を耳にしていますので、そういうお金がこういうところに回るのかなあと思ったりして、あまり喜べませんでした。講座の研究費というのは、学生指導その他、先生たちの図書費(図書館の本ですから、最終的には自分のものにはなりません。しかし、図書館の蔵書は豊かになります)や学会などに行く旅費など、あらゆる用途に使われます。それが一気に半額になるというのは、研究者としても教育者としても息の根を止められるに等しいでしょう。
最近、教授会の意見はまったく無視されるので、これも学長の決断によるのでしょう。それなりのお考えもあってのこととは思いますが、本当に一度ゆっくりお気持ちをおうかがいしたい思いがつのります。
授業の方では「八犬伝」は、まあまあ順調に進んでいます。前回は犬塚信乃について話しました。実は彼はものすごい失敗を何度もして自他を不幸に追い込んでいるのだが、それをそうトラウマにもせず立ち直っているのが立派で学ぶべきだと話しました。学生の反応は、と言いたいのですが、これも今日ある先生から聞いた話では大学の上の方からのお達しで、「授業中に学生から聞いた内容を使って何かを書くときは、学生本人に許可をとらなければいけない」という規則が出来そうになっているということで、それがほんとなら、書けませんね、学生が何と言ったかなんて、ここでも♪
まあこれも、それなりに何か理由はあるんでしょうが、安部政権のすることと言い、スタップ細胞の論文と言い、あちこちで耳にするブラック企業も負けそうな、けっこう伝統も名声もあるいろんな大学の執行部の所業と言い、もう普通の常識とかルールとか約束事とか、ほんとに通用しない世の中になって来てるのを、ひしひしと感じます。いやそりゃ私、小保方氏はまったく好みに合いませんが、それは私の好みにすぎない問題で、あんなむちゃくちゃな論文(スタップ細胞があるかないかは問題じゃない、それ以前のこととしてです)を出させておいてからに、彼女一人の責任にするというのは、いくら何でもおかしかろ。ともかく、もう洗濯機の取説に「猫を洗ってはいけません」と書かなきゃならない時代になってるんだといおうか、江戸時代初期の金平浄瑠璃なんかで、正義の味方がちゃんとルールを守って戦っていても、ルール無視する悪人たちに殺されそうになって、その時に「ヤットコトッチャ、ウントコナ」とかわけわからんこと言って登場する乱暴な若者が、問答無用と悪人たちの首を切って、ごろごろ舞台にころがすと言う、あの状況が到来しつつあるのかとか、何せとにかくバカほど強いものはないとか、さまざまなことを考えています。こんな状況になった責任の一端は、そりゃこの私にもあるんでしょうから、やっぱり何とかしなくちゃいけないんでしょうけどねえ。
で、くだらんことだけ書くと、授業の前に男子学生が「先生、かわいい帽子っすね。自分で作ったんですか」と聞いてきました。「私が作れるわけないやろがー」と笑いましたが、タフでたくましそうな男子学生が、普通に自然にこんなこと聞いてくるなんて、そういう点じゃたしかに、いい時代にはなってるわな。