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紀行全集のために(11) 「笑談夏の旅」解説

もうあまりにも長いことほったらかして、出版社に迷惑かけまくりの「紀行全集」の解説原稿です。

もうこのまま使うかどうかわかりませんが、とにかく、この種の原稿を片っぱしからアップします。なお、まだ表記の整理もしていないのでお見苦しいですが、すみません。いずれ訂正しますが、とにかく急ぎます。(20023.3.30.)

 

笑談夏の旅・解説

 

【作者】

 西尾市立図書館岩瀬文庫の古典籍目録データベースによると、作者吉田楼福住は伝不詳。同行者で序文を期した絵馬屋額祐の門人で江戸赤坂西の久保辺の住人である。

「国書人名辞典」(岩波書店)によると、絵馬屋額祐(二世)は文政十二年生まれ、明治二十三年八月十八日に七十歳で没した。通称は千右衛門、与右衛門。号は望止案貞丸、絵馬屋額祐(がくすけ)二世、画賛人額翁、小野あな女。越後の人で、最初は田村氏、江戸で奉公し、坂本氏に入り古手屋を営む。狂歌作者初世額祐に入門、安政五年、二世を嗣ぎ、明治十年、門人養老亭滝水に三世を譲る。「狂歌仮名文庫」等の狂歌書を編した。

 

【内容】

江戸から東海道を通って江ノ島鎌倉を見物する遊覧記。膝栗毛風の軽妙な文章で狂歌や挿画を多く交え、時に芝居風にふざける。その戯れが過ぎて関所で役人に叱責され、平謝りする場面もある。土地の人々との交流も、面白おかしく描かれている。

江戸の周辺の、東は鹿島や船橋、西は熱海や箱根などの近郊を旅するのどかで楽しい遊覧は時代が下るにつれて盛んに行われ、それを題材とした紀行も多い。そのような作品に共通する明るさがあふれており、膝栗毛以降に多くなる旅の日常を中心に描くのも特徴である。ただ、どこか「地震津波末代噺種」にもつながるような、いささか度を越した陽気さも漂っている。

 

【書誌】

西尾市立図書館岩瀬文庫一五一―一四九。写本一冊。以下表紙の態様は同文庫のデータベースから引用する。「表紙、山道形で上下を区切り、上部は藍色地に「画」字を意匠化した枡形紋(絵馬屋)を白抜き、下部は萌葱色地に4の「ヨ」で囲んだ中に「ダ」字の円形紋(吉田楼)を白抜き。後表紙は同様に、上部は藍色地に4の「ヨ」で囲んだ中に「田」字の枡形紋を白抜き、下部は萌葱色地に「画」字を意匠化した円形紋を白抜き」。非常に手のこんだ装幀である。外題はない。序文の内題「笑談夏の旅」。二五・一✕一七・一cm。二七丁。十一行書。

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カツジ猫