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紀行全集のために(6) 「八条志」解説

もうあまりにも長いことほったらかして、出版社に迷惑かけまくりの「紀行全集」の解説原稿です。

もうこのまま使うかどうかわかりませんが、とにかく、この種の原稿を片っぱしからアップします。なお、まだ表記の整理もしていないのでお見苦しいですが、すみません。いずれ訂正しますが、とにかく急ぎます。(20023.3.30.)

 

八丈志・解説

 

【諸本】

 『国書総目録』は、国会図書館等に六点の写本があるとするが、内閣文庫が五点を有しており、現在十点の存在を確認している。どの本も内容は概ね同一だが、体裁はかなり異なり、細かい異同も随所にある。特に絵図を有するものとそうでないもの、絵図を本文該当箇所に挿入するものと別冊にまとめるものがあり、その数や種類も異なる。一方で小寺応斎「八丈島紀行」と絵図が重なるものもあり、八丈島紀行類の絵図の影響関係については、今後の調査が必要である。

 

【作者と内容】

 内閣文庫一七三―一三一の写本五冊本の第二冊(内題「八丈物語」)の記述によると、大原正矩(陶太郎)は、父大原正純(亀五郎)が飛騨郡代の時に先代からの引負金の件で罪科に問われ八丈島に遠島になった後、願い出て自らも十四歳で島に渡り、父が赦免にあうまでのほぼ十年をともに暮らした。

『寛政重修諸家譜』では、正矩は父の罪に連座して放逐され、正純の時に大原家は断絶したとあるが、「八丈物語」は、正矩の孝養が認められて家督を継いだと記している。

 島で暮らした間の見聞や渡海の際の経験を綴っており、父との生活も描かれるが、悲壮感や寂寥感はなく、悠々自適の明るい印象がある。父の罪や処罰に関する記述は本文にはいっさい登場しない。

 以上についての詳細は、「福岡教育大学紀要」第53号所収「『八丈志』について」(板坂)を参照されたい。 

 

【書誌】

底本としたのは内閣文庫一七三―一五四の写本二冊。青色表紙、左肩子持ち枠白題簽。外題「八丈志 上(二冊目は「下」)」。内題「八丈志」。二三・五✕一五・四cm。九行書。上冊五十九丁、下冊六十七丁。彩色図が多い。奥書「右者更科舎の蔵書 天保四癸巳年仲秋中旬 写之」。

また、同文庫一七三―一三一の写本五冊から、「八丈物語」の正矩の経歴に関する部分と、末尾の「大原陶太郎行状書之写」の一部を追加しておく。こちらは紺色の椿花模様入り黄色表紙。二四・三✕一六・五cm。十二行書、各冊九~三十丁。外題「八丈誌 一(以下の各冊は「二~五」)、内題なし。奥書「天保六乙未年四月写之」。

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カツジ猫