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自然も薬も

昼に鳴くセミの声がぱったり途切れたと思ったら、夜にはもう庭では虫の声がかしましい。まったくもう、自然ってすごい。
ちなみに薬というのもすごくて、アレルギーは三日でほぼ治って、腫れていた顔は元にもどりました。
ただ私、この春からずっと微妙に体調が悪くて、いつも熱っぽく、あれこれ故障が続いてたんですが、きっと基本はこのアレルギーだろうって気がするのよね。だから完治はしてないと思う、身体の奥で。さてどうしたもんでしょうか。

まあとにかく、ちゃんと寝て食べて、何とか死ぬまでもたせよう。さしあたり猫二匹が死ぬまでは生きとかなくてはならないだろうし。

注文していたDVDの「マイ・ボーイ・ジャック」をちびちび見ています。これ劇場で公開されたのかどうか知らんけど、きっちりした、華やかでもあるいい映画です。レンタル落ちのがいやに安く売られてるから皆さん、お買い得ですよー。

キム・キャトラルの名前が最初なかなか出ないので、あれーまちがえて買っちゃったのかと思ったら最後に特別っぽく出て来ました。「セックス・アンド・ザ・シティ」で有名なころだったのかしら。しっとりしたお母さんをきちんと演じていますが、「えっ、別人じゃないの!?」というところまでは変貌しておらず、やっぱりサマンサです。でも言いかえれば、「セックス・アンド・ザ・シティ」の奔放な性欲の権化のサマンサも、彼女は決してはしたなくない、きちんと品のある感じで演じていたのね。だから魅力があったんだと、あらためて気づきました。

ダニエル・ラドクリフもしっかり上手いし、ほんと安心して見ていられます。何よりこれ、「ジャングル・ブック」の作者キプリングの原作というのは知ってたけど、原作というか、もうキプリングの自叙伝なのね。主役のジャックのお父さんとして出て来るのだけど、本人そのまま、英国の有名人気作家で、国王にも政府にも大切にされてる人。そしてものすごい愛国者で好戦的な演説して、ドイツと戦えと人々をアジって、政府からとめられてもやめない(時は第一次大戦前)。

イギリスって「ナルニア物語」でも「ウォーターシップダウンのうさぎたち」でも「メリー・ポピンズ」(映画の方)でも、こういう共産主義嫌いフェミニズム嫌いは普通に出て来るんで、それは驚かないんだけど、何しろ保守の殿堂の国だったわけだから。でも、もちろん今の映画として描くときは、それを変に弾劾するのじゃないけど、きちんと距離感を持って愛情もこめて描いているのが、見ていて何だかしみじみします。

それに、このお父さんは、マイケル・ムーアが痛烈に批判したアメリカの大金持ちや、「自衛隊が行きゃいいんでしょ」みたいに片づける日本の若者とはちがって、自分の息子を必死で海軍や陸軍に入れて戦地で戦わせようとするんですよ。また息子がいい子だから一生懸命それに向かって努力する。まあ当時はエリートですからね、入隊するのは。
でも、近眼なので合格しない。するとお父さんは必死で自分のコネを使って息子を軍に入れようとするんです。もうどこまでコメディとして描いてるのかわからないけど(きっとちがうよね)、見てて何だか笑いたくなるぐらい。

私はいつからか、この、「何かあったら女子供や国を守るために、死んだり殺したりするのが当然」ということになってる男性という性が、気の毒でつらくて痛ましくて、いてもたってもいられなくなっています。そんなこと、生まれながらに決められて生きているって毎日どんな気持ちなんだろうと思ってしまう。それを平気で、何ともしないで見ている女性たちにいつも怒りを感じてしまう。この最大の、屠殺所の豚か鶏舎のニワトリか剣闘士みたいな男性差別をなくさないでいて、何が女性の権利だとまで思います。

昔は、そんな体験をした人が、たくさんちまたにあふれてたわけですよね。何の精神的ケアもされないままで。虐殺もレイプも、あえて言うなら、被害者同様加害者も傷ついて壊れているわけで、それを放っていたり無視したりしておくなんて、まったくひどいことだと思う。無罪放免なんて一番残酷じゃないですか。

いやまあとにかく、そんなこんなで、思わぬ拾い物だった映画をちびちび楽しんでいます。まあそんなことばかりしているわけには行かないから、今から原稿書きか料理か郵便物の荷造りをしよう。猫のカツジにブラシもかけてやらないと。

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カツジ猫