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街に出ると誘惑が多い。

◇ラッセル・クロウの「パパの遺した物語」を見るのもあって、ひっさしぶりに街に出たら、果たして誘惑が多く、大きな青い水差しと、紫がかったエナメルの靴がほしくてしょうがなくなった。でも、ぐっとがまんして、母の部屋に毎年飾ることにしている、黒井健さんのカレンダーと、上の家の洗面所のタオル掛けに使う、洗濯バサミとだけ買って帰った。

黒井さんの絵は、葉祥明や安野光雅にもちょっと似ているが、私はこの人のが、やわらかくて暖かくて、一番好きだ。毎年買ってるので、カレンダーの絵がたまってしまって困る。ラミネートしてそれこそ、洗面所の壁にでもはってみようかと考えている。

そして来年の黒井さんのカレンダーの表紙は、川の向こうにならぶ二軒の家で、左のは古い(あ、よく見たら特に古くはなかった。笑)和風の家、右のはちょっと洋風の家。間は庭のようで大きな木が見えている。
まるっきりそっくりではないのだが、ふしぎなほどに、田舎の実家の様子に似ている。帰省してこちらに戻るとき、川の向こう岸の道を走って帰ると、川向うに並んで見える実家の二軒(一軒はもう売ったけど)の感じにそっくりだ。

◇街で友人と会ったのだが、彼女が読んでしまったのを持ってきてくれた「週刊金曜日」がマイナンバーの特集をしていて、その項目のひとつに、これ以上はないぐらいきっぱりと、「勤務先にマイナンバーを知らせる必要はない」と書いている。そら見たことか。「サンデー毎日」もマイナンバーの特集をしているようなので、明日買って来よう。ちょっとだけ立ち読みしたのだが、「週刊金曜日」と共通しているのは、この制度が少数者や異端者の「あぶり出し」に有効だということで、何ていやな制度だろう。

こういう時私は自分がそういう異端者でないのが、とことんくやしい。と思ってたら、異端者だったりするかも。というか、そういう時に少数者、異端者にならないだろう今の自分は、何か堕落して弛緩して、だめになってるような気がする。
うしろぐらいところがある、お尋ね者で、知られたら困る過去や現在を持っているという存在が、私は普通に目標であこがれで、生きている実感で、いろんなことのよりどころだった。美空ひばりも島倉千代子も石原裕次郎も吉永小百合も、どこがいいかわからん、大嫌いというのも、その一つで、ラジオやテレビや新聞や偉い人の話を聞くと、基本的にはむかついていやな気分になるのが、わたし的には健康で平和な毎日のバロメーターだった。

それが、何となく最初から好きだった山口百恵が人気者になったあたりから、何だか世の中と波長が合い出し、ボーイズラブだのフェミニズムだの個人主義だのと、私が世間から孤立する条件だと思っていたものがどんどん認定され、こっちもまた、オリンピックで日本選手が勝っても、高校野球やプロ野球で地元のチームが勝っても、そんなに不愉快でもなくなった。なんかもう、いろいろ、すごく自分がナマッたなあと思う。世間とも周囲とも、もっと対立しなくちゃなあと思うが、そうやってわざと対立するのもまた、本物じゃない気がする。どうしてくれよう。ラッセル・クロウだって、いつの間にか、立派な名優として地位を築いてしまったしなあ。

と、そうやって話はどんどんそれて行くが、マイナンバーについてもまだ書きたいことはある。でもまあそれは、また明日にでも。

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カツジ猫