1. TOP
  2. 岬のたき火
  3. 日記
  4. 豚も山羊も

豚も山羊も

家の外は燃えるような暑さだけれど、案外風もあったりするので、時には外に出ると気持ちよかったりする。とは言え、野バラの茂みを切る元気はまだ出ない。かわりにパンジーが枯れてしまったあとにヒマワリの種をまき、広がったラベンダーの茂みのはしを、少しだけ刈り込んだ。切った枝をあちこちの植木鉢に挿し木してみようと思っているのだが、どこまで根付いてくれるのやら。

適当に買った文庫本『夏の庭』を一気読み。楽しかったが、独居孤独老人の家や庭が、子ども三人で、こうまできれいに生まれ変わるのは、夢物語だよーと似たような環境にいる人間としてはつくづく思う。まあ、楽しんで読むには文句はないのだけどさ。

先日、友人と電話で話したときに、クラスター爆弾の話になった。ミステリファンの友人が、クラスター爆弾の最初のころのが出てくるという『シナモンとガンパウダー』というミステリの中で、爆弾で豚の大群がふっとんで、残りは料理に使おうとしても、肉片も残らなかったという話を紹介し、私もたしかアメリカが砂漠で核実験をくり返してたころ、豚の群を囲いに入れて、被害を実験してたなあと思い出し、ウクライナがロシアの残した地雷の処理に苦労してるって話題から、昔、中村哲さんが講演の中で、アフガンの人たちが、地雷は山羊とか歩かせて、おおかた撤去したってさらっと触れてたことも思い出し、豚も山羊もかわいそうだと同情した。人間はどうせ動物をひどい目にあわせつづけているけれど、戦争でもそうなのだと思うと、つくづくもう、いやになる。

ますむらひろしの『霧にむせぶ夜』って漫画、『動物登場』って本のなかでも引用したが、あの作品なんかも、ふと思い出す。猫たちの、あの怒り。人間への断罪。あの本の中で、私はそれを、こう紹介したっけ。(全文はこちらで読めます。)

自然破壊や人間の横暴について弾劾する硬質な文章の多用。猫の顔の毛を細かく書き込むリアルな描線と、耳を伏せ口を大きく開けて目をつり上げた猫たちの表情。時に笑いを誘いながら、猫という生き物の姿を借りて爆発していた怒りの激しさ。自分たちを取り巻く状況の悲惨さに涙する仲間に向かって、彼らは叫ぶ。
「泣いている場合ではありません。不平や不満を言ってばかりで、動こうとしない連中とは僕らは違います。僕らは猫なのですよ」
そして彼らは人類の滅亡を決定した。霧の深い夜に、北国の田舎の橋のたもとで、上郷農協から借りてきた机を囲んで。

ちなみに、アフガニスタンの山羊については、ずいぶん前に、このタイトルにも使ってたっけな。

Twitter Facebook
カツジ猫