野球観戦
話せば長いことながら。
亡くなった叔母が、豪華な衣装をわんさと持っていて、かなり親戚やよその人にもらっていただいたのですが、何しろその時はもう必死だったんで、きれいなワンピースに、恐ろしく手のこんだ美しいベルトがついていたのを気づかずに、さしあげてしまったものがかなりありました。もう二十年以上前のことで、もらっていただいた方も探しようがない。
美しいベルトの数々を、ともかくとっておいたのですが、だんだんこっちも余命が短くなるにつけ、せめて何とか使わなくてはと思い始めました。
シンプルなワンピースに、このベルトを締めれば、近場の買い物や集まりには着て行けるかも、とずっと思っていたら、最近そういうワンピースが、そこそこ安くてまあまあよさそうなのが、近くのモールのお店にいろいろ出ていて、おっかなびっくり、七千円程度のを二つほど買ってみました。
そうしたら、お店がくじ引きのカードをくれて、応募したら商品券か、ペイペイドームの観戦チケットかがあたるとのこと。枚数も多かったので、だめもとと思って書き込んで、店内の応募箱に入れました。どっちの商品を選ぶかについては、そりゃ商品券にも心は大いに動きましたが、何だか更級日記の「まめまめしきものは、まさなかりなむ(実用的なものでは味気ないでしょう)」のせりふを思い出して、野球観戦チケットにしておきました。
それがあたって、コカ・コーラシートの席が手に入り、しばらくぶりで、昨日出かけてホークス対ロッテ戦を楽しんで来ました。ホークスの有原投手が立ち上がりにいきなり二点とられましたが、そのあと若手を中心にホークスがばかすか打ちまくって逆転し、10対2で勝ち、おかげで花火もしっかり見ることができました。しかし、あんなに何もかもうまく行った翌日は、得てして反対の結果になりそうで、何だかそれも見に行きたい気がしますが、きりがないので我慢します。


私がドームに観戦に行ったのは、もうかなり前で、サファテや五十嵐が投げて、上林や柳田が守ったり打ったりしていました。だからもう、よっぽど昔です(笑)。その時は外野の一塁側で、選手たちを見下ろす位置でした。
今回の席は、選手と同じ高さの席で、彼らを見ることができます。時が流れすぎていて、もはや、どの選手も私が初めて見る(肉眼では。笑)人ばかりでした。ものすごく不思議なのですが、上から見下ろしていた時に比べて、彼らは皆、何だか小さく、心もとなく見えました。有原航平投手はさすがに大きく見えましたが、川瀬晃選手は思ったよりもずっとほっそりスマートに見えたし、牧原大成選手は、すばやい動きながら、かわいらしいほど小柄に見えたし、周東佑京選手は遠目にもどことなく楚々としてはかなく見えて、最初のころ変にしおしお歩いているのが、足がよっぽど痛いのかと心配になるほどでした…と思ったら、いきなりでんぐりがえりそうな勢いでファインプレーをして、直後にヒットを三本打ち盗塁も二つ(あとでひとつは相手のエラーになって結局記録じゃ一つでしたが)成功させて、思わず君はうちの猫か(ときどき突然脚をひきずって歩くから、青くなって病院に連れて行くと、どこも悪くなくて、数日後にはぴんしゃか飛んで歩いたりしている)とつぶやきたくなりました。
ただ彼は、盗塁のときも勢いや迫力というより、すうっと移動するのですね。それは見ていてよくわかり、相手はさぞかしいやだろうなあと思いました。怒りがわくより、だまされたような気分になりそうです(笑)。そして、だまされたと言えば、やっぱりこういうプレーみたいな生き方で、どこか痛くても涼しい顔で笑ってるんだろうと思うと、もう心配してもしょうがないから、無事を祈るしかありません。
慶応好きだった母がさぞ見たかっただろう柳町達選手は私の席からは見えにくいレフトの守備で(あんまりそっちを見てると、打席を見てる隣のおじさんと目が合っちゃうんで。笑)なかなか観察できなかったけど、雰囲気は強いというより物静かで、ひっそりのんびりして見えました。母がいたら、きっと品がいいとか言ったのだろうと思います(笑)。
三塁側の一角にロッテの応援席があって、旗を振って声をあげて、なかなかの迫力でした。写真では伝わりそうにないのが残念です。おなじみの白や黄色の風船が飛んだり、勝利インタビューのあと、山本恵大選手がファンサービスにやって来たり、いろいろ楽しかったです。それと、いつもはテレビやラジオやネットの解説で、瞬時に何があったかわかるのですが、ただ見ていると、とっさに何がどうなったかつかめないのですね。それもまた面白く、空を切って飛ぶ白球が、毎回とてもきれいでした。



