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金属疲労。

◇この前ばたばた買ってきて、適当に植えたオレンジ色と紫のパンジーがなかなか感じがいい。花も小さいし色も淡いし、そのわりに高かったりして、どうかなと思ってたのだが、遠目にも高級感があって、道路から見える場所の鉢の中で、風にふわふわそよいでいるのが、帰って来るたび楽しくなる。植えっぱなしだった花かんざしも、小さいつぼみをいっぱいつけた。梅の花はそろそろ散り出して、黒い土の上に白い花びらがきれいだ。

◇なかなか取りに行くひまがなかった、リフォームを頼んでいたパンツと虫食いを直してもらった叔母のワンピースを取りに行き、注文していた座布団カバーと、張り替えを頼んでいた椅子も取ってきた。
座布団カバーは、祖父母の古希だか何だかのお祝いに市がくれた、大きな赤や紫の「寿」の文字入りの座布団にかぶせるための特注だ。何と皆で四枚ある。昔は敬老会や市がこういうものをお祝いにくれていたのだけど、今はもちろん何もくれない。母が敬老の日のお祝いが、弁当から紅白饅頭になり、やがて何もなくなったと言っていたっけ。
大きいので、クッション代わりに使えるので、近くのふとん店にあったはぎれで、派手な花模様のカバーを作ってもらった。

椅子の方は、カリモクの上等だが、黒い人工皮革を猫たちが爪で破ってみっともなくしたので、カバーをかけて使っていた。三毛猫シナモンが、いつもこの上で寝て、死んだ後も何時間か私はここに寝せていた思い出の椅子だ。
近くの家具屋で布張りに張り替えてもらい、カタログで真っ赤の布を選んだのだが、思った通りいい出来になっていた。居間か仏間のどちらかにおいたら、いいアクセントになるはずだ。と思いつつ、まだ車から降ろしていない。

◇車のエアバッグが不良品の可能性があるから、とりかえに行くようにと、ダイハツの本社から何度も通知が来ていたのだが、これもなかなか行けずにいた。今日やっと、隣町の工場に行ってとりかえてもらった。もちろん無料で、待っている間に、きれいなルームでコーヒーを出してくれた。

このところずっと、妙に気持ちが不安定でハイになっている私は思わず、「今、このくらいの車だったらいくらぐらいするの」と聞いてみた。新車でも100万ぐらいで買えるし、今はお買い得だそうで、かわいく上品なピンクの車があった。買っちまおうかと思ったが、ホイールの割れたわが車が、ちんまり店の前にいるのを見ると、まだまだ別れたくなくなって、お店の人も何を考えたか「急なお話ではないんですよね、あと一年ぐらいは乗られるんでしょう」とか言うので、「そうね、どうせ私が手放したら廃車だろうし、ほんとに、トラックなみによく働いてくれてるから、なかなか手放せないのよ」と言って、そのまま帰って来た。

エンジンルームもついでに点検してくれたら異状はなかったそうだ。少しベルトがゆるんでるかなと思うけど、まだまだ走れますとのことだった。やたらと売りつけないのがうれしくて、買い替えるときは、ここにしようかなと思う。「ずいぶん走っておられますね」と言われて、あらためて気がついたら、走行距離は20万近くになっていた。
本当に、頼りになる戦友のようで、文句も言わずにつくしてくれて、人間よりもよっぽど愛しい(笑)。

◇友人が「お母さんも亡くなったし、あなたも少しはゆっくりして、映画を見たり本を読んだりしているかと思っていたのに」と言うので、それとはあまりにかけはなれた、ものすごい忙しさの中にいた自分の異常さを、あらためて思った。こんなことが続いたら、どこかが金属疲労を起こして気が変になる気がするから、当分心も身体も休ませることにした。母が亡くなってからずっと不安定な気持ちの中に、たしかな碇を下ろす余裕もなく動きつづけていた自分が、たしかにどこかで、だんだんおかしくなってきている。今の自分はまともじゃないし、しっかり養生しなければいけない。

◇さっき、妙に甘ったれた声で鳴いてすりすりしてきたカツジ猫は、エアコンの前の椅子で丸くなって寝ている。ストーブもつけてやっているのだが、今夜は暑すぎるのかしらん。やっぱり少し大きくなってきているようで、昔とちがって、身体がこんもりと盛り上がって見えるのが、何やらうれしい眺めである。

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カツジ猫