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降参して籠城

今朝カツジ猫が朝食のお刺身のおすそわけを食べて、ベッドに寝にいったから、ゆっくり食事を続けていたら、やつは何を思ったか戻って来て、ドライフードを食べようとテーブルを横切りかけた。もう戻って来ないと油断していて、お刺身の透き通ったパックの蓋を通り道に置いていたものだから、やつはそれを踏んで脚を踏み滑らして、床にどさんと落下した。

人間で言うなら二階か三階から落ちたにひとしい高さだからぎょっとしたが、やつは腐っても猫で、のそのそ起き上がって庭に出て行った。見ないふりをしておいてやるのが情けだろうと思って放っておいたら、いつまでも帰って来ない。心配になってドアを開けたら、その前で寝ていたらしくて、また石段からころがり落ちた。

呼んだら家に入って来て、一応無事に歩いているから、チュールをふるまってやったら食べあげて寝に行った。心配でないこともないので、呼びよせて、脚とか腰とか触ってみたが、別に異常もないようで一安心。まったくこいつと暮らしていると年がら年中気が抜けない。ああ。

オリンピックも次第に終盤が迫ってきたのかな。「ハイテンション中継」の評判が悪かったからか、アナウンサーもあんまり狂ったような絶叫や雄叫びをあげないで、比較的静かに報道してくれるから、ありがたくて、ときどき横目で見ている。卓球の早田選手が「自分としては金メダルよりも、この銅メダルがうれしい」とにこにこしていたのはかわいかったし、スケートボードの十代の少女たちが勝敗より技を成功させることに夢中になってて、ライバルどうしでもむちゃくちゃ仲良く応援しあってるのもさわやかだ。他の競技の選手たちも案外冷静で平静で、落ち着いてインタビューに答えているのが、ほっとする。まあたまには号泣だの悲壮感満載の人もいるが、そのくらいはさすがに私も気にならない。

スケボーでさっき二位になった少女(ごめんよ名前見てない)は技もさることながら、白いシャツを無造作に羽織って羽のようになびかせて疾走するスタイルが、カッコいい!とそのファッションセンスにも感心したし、フェンシングで優勝かなんかしたウクライナ女子チーム(なんだか皆がやたら美人に見えたのは気のせいか)の一番人気の一人が、対戦相手のロシア選手との試合後の握手を拒否して、剣をつきつける映像もちらっとしか映らなかったけど、インパクトがあって目に焼きついた。

もう何十年前だろう。女子体操のチャスラフスカ(チェコスロバキア)が鬼気迫るようなすごい形相で、かわいらしいクチンスカヤをはじめとしたソ連の選手をけちらかす迫力ある演技で金メダルをとったのを思い出す。あのころはまだ私はソ連が嫌いじゃなかったから、彼女の前では小娘にしか見えないソ連の女子選手たちを複雑な思いで見つつ、否応言わせないその迫力と祖国を蹂躙された怒りのこもった演技に圧倒されたものだった。

朝夕は涼しいのだが、あいかわらず日中の暑さは殺人的で朝ドラの「虎に翼」の雪景色にほっとしてしまう。体力はともかく、こんな日差しの中を外出したら、ちょこっと白内障の気があるかもしれないのに、目をやられそうで、危険すぎる。なのでとうとう今日はマッサージも研究会も美容院も皆キャンセルして、家にこもることにした。どっちみち屋内でも仕事は山積みなんだからな。

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カツジ猫