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黒猫が語る

毎日新聞の朝刊に、詩人のアーサー・ビナードさんが、丸木夫妻の「原爆の図」を紙芝居にした話が紹介されていた。ビナード氏は、玄海原発訴訟の裁判でもたしか証言してくれていた。
この紙芝居もなかなかいいらしい。語り手は「原爆の図」のすみっこに描かれている小さい黒猫である。

大田洋子の「人間襤褸」を、ちびちび読んでいるのだが(大衆小説みたいな…ほめているのだが…スケールの大きさと人間模様で面白い)、彼女の「屍の町」で、被爆直後に避難した河原で、近所の大きなお屋敷のシェパードが、いつもは猛犬なのに悄然と所在なげにうろついていた様子が出てくる。けがはしてないようだったけど、多分長生きはできなかったろう。

長いこと、私が原爆を描いた文学で見受けた動物というと、それだけだった。猫や鳥など昔だからたくさんいたはずなのに、小動物はそれこそ一気に灰になったのだろうか。

その後のやはり紙芝居を使った講演で、黒焦げで死んでいる馬の姿を見た。最近どの小説かで、やはり被爆直後の町で、盲目になったかして苦しんでいる馬のことを読んだ気がする。あの頃は、まだ輸送手段として、町中にも馬がいっぱいいた。彼らも人間同様に苦しんで死んだ。

むちゃくちゃ言うと、原爆で人間が死ぬのは、ものすごく広い意味では同じ人間のしたことだから、まだ自己責任もあるだろうが、動物たちが、それもかわいがられていた犬や猫ではなく、こき使われて人間のために働いていた馬たちがそんな目にあったというのは、人間でありながら人間を私は許せない。

DVD「万引き家族」を見た。これがカンヌで賞をとったのに、いつもは日本人が何かそういう功績をあげると、本当にそのとたんに、2ちゃんねる風に言うとシュバババババとかけ寄ってきて人気取りに利用する首相が、まったく完全に無視したことは、ネットでもとりあげられて怒りや嘲笑の対象になってたが、ということは首相かその取り巻きは、一応これを見たんだろうかな。それとも題名だけ見てびびったのだろうか。

私は昔から、こういう貧乏たらしい、ぐちゃぐちゃ汚れて散らかった画面が続く映画が大嫌いで(自分の生活が似てるからかもしれない)、見てるだけでも苦痛なのだが、ふしぎなことに、見始めるとやめられなかった。とても品のいい、立派な描き方、撮り方をしていて、エピソードやせりふの先がまったく読めないのも快い。

樹木希林も私は好みからいうとべたべたぐちゃぐちゃした感じが好きじゃないのだが、それにまあそれは名優でもそういう人多いからいいけど、何をやっても同じに見えるから退屈になる。でもこの映画では、あまり気にならなかったし、この役のおぞましい凄さ(どっか笑っちゃう)もよく出ていて悪くなかった。

通り一遍ではない、すごく複雑で高級な問題をいろいろ提示していて、そこも観客をぴたとも甘やかしていないのが快かった。

それから、二階で少しずつ読んでいたノサックの「弟」をついに読み上げた。最後まで何だかわからない展開だが、それでも変に面白かった。敗戦後のドイツがナチスへの反省とかも別にないまま、ずるずる復興していくのも、そんなもんだろなあと実感するし、しかし見えない傷や病気もどこかに感じられる。
ラストに近い、主人公の借りている部屋の描写が、無駄に長くて詳しくて、それも何だか圧巻だった。妙にはまる。

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カツジ猫