映画「仮面の男」感想集映画「仮面の男」感想(とは名ばかりのおしゃべり)2

その予想はいい意味で、みごとに完璧に裏切られ、三銃士ものとしては一番好きな映画になったのみならず、原作を読んだときのあの深い悲しみまで、拭い去られていやされて、あーほんと私生きていてよかった、生きてたらこんないいこともあるとまで、幸福感をかみしめる結果になった、もう感謝してもしたりないような映画なんですが、まあそれはそれとして。

ディカプリオはこの映画の演技で、ラジー賞候補になったらしいけど、「トロイ」のブラッド・ピットといい、世間の人や批評家は、現代劇で活躍してた二枚目スターがコスプレすると引くのかなー、あんまり評判よくないですね。
でも、ブラッド・ピットもそうでしたが、私はこのディカプリオもほんとにうまいと思います。充分に実力を見せつけてますよ。
ただ、「仮面の男」の場合は、ほぼもう、あらゆる批評が一致するように、四人のおじさん俳優がみごとすぎて、ディカプリオが食われまくりということは、たしかにあって、でもですねー、あれはですねー、彼を弁護すると、主役のあの役が、一番難しいんですよ。二役どっちも。ルイもフィリップも。
それを、あれだけ持ちこたえてるんだから、案外あの中で一番うまいのはディカプリオなんじゃないですか、もうマジで。

多分、あの中で一番やりやすいのはダルタニャンだと思う。バーンの人気はあの映画で相当上がったはずですが、彼のイメージに合ったとか、演技がうまかったとかいう以前に、あの役で失敗しない方が難しいのじゃあるまいか。
アトスの役も、わりとというか、相当にやりやすいと思う。この二人のせつなーい心情は、誰でもとは言いませんが、ほんとにシロートでもやってやれないことはないぐらい、わかりやすいし、やりやすい。

アラミスとポルトスの役は、そういう起伏や裏表はないけれど、もう、キャラが定まりつくしているから、これもまた、表現しやすい。とにかく、四銃士の役は、やったらやっただけ、ほぼムダなく、効果が生まれて人の心に訴える役で、きっとやっててものすごく楽しい。
まあこれは、原作ももともとそうなんですけどね。これまでの映画は、それを変にいじりまわしたり、勝手な解釈しようとして失敗してるんだけど、それをしなければ、ほんとに四人の性格分けのバランスがいいから、役者は寝てても成功する芝居です(そこまで言うか)。

ルイとフィリップはそうじゃない。まあ、わかりやすい役の設定ではあるけれど、原作では後編で新しく登場するし、その分描きこまれてないし、だいたい「いい王様」と「悪い王様」なんて、具体的にはものすごく演技しにくいですよー。あんまりそれを見せつける場面があるわけでもないし。
ディカプリオは、まちがいなくうまい俳優ですが、多分、実際の人柄がよくて欲がないのか、しばしば他人に食われます。きっと、難しい役でも見せ場がなくても、あんまり文句言わない人なんじゃなかろか。自信があるからがまんして、不利な条件下でも相手をたてて、演技してしまうんじゃなかろか。などと私は妄想しています。

ほーらもう、長くなりすぎなんだったら。

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カツジ猫