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六年生の夏(10)

今も毎日、水まきにひいはあ言ってる私ですが、田舎の家(今はもう友人に買ってもらったので、私のものじゃありません)はものすごく庭が広かったのですよ。ホースもなかったと思うんですが、どうやってまいていたんだろう。

私がよく登っていた、この「もっこく」の木はもう枯れてしまいましたけど。

この巨大な石灯籠はまだ健在。まん中の四角い穴の中は涼しいのか歴代の猫がよく寝ているのが、お座敷から見えました。

8月8日 金曜 天候◯ 温度27度 起床6時0分 就寝10時10分

図画の講習から帰って伊佐子ちゃんと水まきをした。私は面白がって景気よくまいていると、おじいちゃんが家の中まではまかんでいいと言った。それで私はじょろをさがして来てまいていた。太陽にせを向けて、じょろで水をまくときれいなにじが出た。私と伊佐子ちゃんは喜んで、じゃんじゃん水をまいて、にじが出たにじが出たと騒いでいたら、部屋の中でねていて安本さんが「どこに、にじが出たんかえ。」とねぼけたような顔をして出て来たので私たちは死ぬほど笑った。安本さんが鼻の治療をしに診察室に入って言ったので私たちはまた、水をまき始めた。私はすきを見て伊佐子ちゃんにザブンと水をかけてやった。伊佐子ちゃんは怒って水を入れたひしゃくをふり回しながら私の後を追いかけて来た。私がびしょぬれになるまで、そうひまはかからなかった。おかげで井戸水がなくなって夜にはおふろがわかせなかったそうだ。

従姉の名前は伊佐子ちゃん。今でもきっとアイドルになれそうな美少女でした。小さいときの私が描いた彼女の絵があります。

それにしても、この日記を読んでてすごいと思うのは、登場する人のほとんどが、もう死んでるんですよ(笑)。祖父母はもちろん、も、叔母も、安本さんも、伊佐子ちゃんも。その皆がこうやって、生き生きと笑ってしゃべって動いているのを目のあたりにすると、彼らがいなくなったような気がちっともしない。私は現在も未来も好きですが、過去の世界に迷い込むのも、何だか楽しく、元気が出ます。

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カツジ猫