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新シリーズ「馬の中」について

今、Amazonで発売中の紙本「砂と手」のシリーズは、あと三冊を残すのみとなりました。それももうすぐ仕上がりそうで、運がよければ三月中にはお目にかけられるかもしれません。

私の当初の計画では、というか終活をかねての老後の予定では、老い先短い身ではあり、このシリーズを完成させたら、趣味で書いて来た小説はいったんお休みにして、もしかしたら永遠に店じまいして、以後は家と庭の片づけと、まあどれだけ仕上げられるかはわかりませんが、本来の仕事の国文学の研究の整理だかまとめだかに戻ろうと思っていました。地味でも退屈でも、それは幸せな老後だろうと思っていました。

ところが、恨むなら文句を言うならトランプとプーチンとネタニヤフが悪いのですが、世界情勢があまりにもひどいことになっていて、人類がとんでもないことになりそうなので、もうちょっとだけ何かをしておきたくなりました。

少し前から年も取ったし体調もいまいちだし、「むなかた九条の会」その他の活動はくやしいけれどかなりひかえて、平和やら民主主義やらのために何かするなら、口はばったい思い上がりかもしれないのは百も承知で、「私にしかできないこと」をするしかないと考えていました。及ばずながらやっぱりそれは文章を書くこと、それもどんなに下手でも未熟でも書き慣れた小説のかたちで示すしかないと思っていました。

これまで友人たちといっしょに、このホームページでも公開している「鳩時計文庫」という小説類を自費出版して来ました。その中で、中断していた「水の王子」という日本神話をもとにした話を、四十年ぶりに書き継いで、去年完成させたのですが、ひきつづき、映画「グラディエーター」の感想や分析を小説のかたちで書いていたものを、「砂と手」というシリーズにして紙本で出版することにしました。

何しろ家の片づけと国文研究という先の仕事がひかえているので、嵐のようなスピードで作業を進めて、どうやらやっと完成に持ち込めそうなのですが、ごらんになったらわかるように、このホームページには、映画「トロイ」をはじめとした、ギリシャ神話をもとにした小説群も少しあります。「砂と手」シリーズの数年後の2004年に書いたものです。

時間的にも体力的にも、これはもう出版するつもりはありませんでした。
 しかし、前にも書いたように、世界の状態があまりにもひどすぎるので、どうしても、この小説群も出版しておきたくなりました。しなければいけないような気がして来ました。

詳しくはまた書きますが、「砂と手」シリーズと異なって、この小説群はすべて、平和と戦争がテーマとなっています。紀元前の古代の戦いを題材に、平和を守り、戦争を防ぐにはどうしたらよいのかを、あれこれ考え、問いかける内容になっています。

それにしてはいろいろと、ずっこけすぎると思われそうなところもありますが、そこのところはお許し下さい。深刻で切実なだけではなく、戦争と平和について考え行動することは、楽しくも面白くも愉快でもあるということを、何よりお伝えしたかったのです。

そんなわけで、「砂と手」シリーズ以上の嵐どころか竜巻のような勢いで、紙本用に原稿を整理し、いつもの下手なイラストの挿絵を描きまくっていました。この半月かそこらで、ほぼ仕上げ、そろそろ出版のための作業にかかれるまでにこぎつけました。

この新シリーズは「砂と手」よりも短くて、三冊で終わる予定です。そしてシリーズ名は「馬の中」ということにしました。わかる人にはおわかりでしょうが、まったく意味不明なところが、面白いかもしれません。

各冊の中身はまたあらためて紹介しますが、作品はすべて、「砂と手」同様に、このホームページで紹介していますので、興味のある方は、どうぞごらんになって下さい。少しだけお知らせしておきますと、収録作品は以下の通りです。なお、映画やギリシャ神話を知らなくても、多分楽しめるだろうと思います。

第一冊 「三幅対」「疾走」
 第二冊 「おれにまかせろ」「守りつづけて」
 第三冊 「12日間」「想定問答」「船はもう着いているのに」「旅の終わり」

あとは、ぼちぼち、明日からまた詳しく、ご説明します。

あいも変わらず下手なイラストを、いくつか紹介しておきます。今回は「砂と手」シリーズとちがって、色塗りは雑で、余白も多く残しています。これは時間を惜しんで手間を省いたからでは決してなく(笑)、「砂と手」や「水の王子」とちがった雰囲気にしたかったからです。私の能力で差別化をはかろうなどと誠に身の程知らずですが、心意気だけはくんで下さるとありがたいです。思い上がりついでに申しますと、このような乱暴ななぐり書きめいた描き方が、それなりの勢いも感じられて、「砂と手」「水の王子」とはまたちがった魅力がありはしないかと自分を勇気づけたりもしているところです。

 

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