最後までひやひや
さっき「砂と手」第二冊と第三冊をAmazonに登録して出版手続きを頼み、チェック用の試供品を送るよう依頼もすませたのですが、何だか登録画面の表紙の文字の色合いが変で、落ち着きません。画面表示の問題で、実物は大丈夫なのかもしれないけど、試供品が届くまでの数日、またしてもドキドキです。ほんとに最後まで気が抜けないったら、ありゃしない。
ところで、昨日予告した「忘却バッテリー」の人間関係の話ですけど、その中のひとりの千早瞬平くんは、他者に「いいなあ」と言ったり思ったりすることが大嫌いで自分に許せないんですが、先日自分のブログで、こんなの見つけて笑いました。かねがね思っていたんですが、私は千早くんより、相当性格が悪いかもしれない。
で、本題の、その千早が巻田に冷たくて藤堂には親しむ理由ですが、あくまでひまつぶしの、いいかげんな分析ですから、そのつもりでごらん下さい。
千早って俊足が売りで盗塁その他で相手を翻弄するのが特技のプレーヤーですけど、差別偏見とも言わば言え、こういう選手って絶対、映画「ハート・ロッカー」の主人公や、「シャーロック・ホームズ」の主人公みたいに、危険中毒なんだと思うんですよ。退屈と安穏が死ぬほど恐い。身体も心もなまって腐りそうになる。絶体絶命の窮地が大好き。でないとやってられるわけがない。
こっちも忙しい身なもんでデータ収集がまったく出来てないんですが(笑)、さしあたり今、現実のプロ野球で俊足盗塁の代名詞みたいになってるホークスの周東選手が、WBCの大舞台だっけちがったっけで、勝敗決するぎりぎりの局面で代走起用されたとき、塁上で笑ってたのに「こいつのメンタルどうなってる」とびびったコメント多かったし、大谷翔平選手に向かって「足遅くて抜かしそうになったわ」ってジョークを言ったり、繊細で堅実で礼儀正しくしっかりした性格なのは多分基本にあるのは何となくわかるし、「盗塁を失敗したらと思うと恐くて泣きたくなる」とかも言ったりしてるのに、どこかものすごく危険を好み、冒険を楽しむ異常で病的(ほめてます)なところがある。
彼の属するチームが地元なもんで、そういう情報が何となくちょこちょこ入ってくるのですが、同様に俊足で有名な五十幡亮太、和田康士朗といった選手は、他チームなのもあって、そういう情報や人となりを示す資料がなかなか見つからない。彼らに期待し、もっと活躍してほしいともどかしがるファンの声もよく聞きますが、もしかしたら、彼らには、そういう危険を好むヤバさや不健全さ(笑)が不足してるのかもしれない。知らんけど。
千早くんの外見は、どことなく猫に似せて造型されてるようですが、猫って興味や関心があるものには、近づいて、前足でひっかいたりたたいたり、ちょこっとやっては、ぱっと身をひるがえして逃げるのが好きだし上手い。千早の藤堂への関わり方は何だかそれとよく似ている。
藤堂くんは、外見も発言も強いしヤンキーだし、いつぶちきれてなぐって来るか予想もつかない。その危険さが千早くんをうずうずさせるんだと思います。実際には藤堂くんは自制心も強く理性的だし優しいし、弱いものいじめはしないし、安全でまっとうなんですが、秘境の探検家みたいに、その限界を確かめたりさぐったりして遊ぶのが、千早くんには抵抗できない楽しみなんでしょう。
巻田くんは、その点退屈なんですよ。言うことすること、地平線までみえみえの野っぱらみたいに予想がつくし単調だし、価値観も美意識も一定だし、まじめに努力して成長するし、傷つけてもいじめても、反応は全部前もってわかるし。
それに藤堂くんはほっとけば近づいて来ない。こっちが好きなときに遊べる。巻田くんはほっとくと近づいて来て離れない。暑苦しいし、重たい。
歌舞伎の「東海道四谷怪談」のお岩さんは、よく知られている恐ろしい幽霊の姿になるまでは、けなげでまじめで優しい立派な妻です。でも、それを見捨てて裏切って、最後までたたられる夫の伊右衛門の気持ちも、ここだけの話わかるのよね。非の打ち所ない、ベタな良妻って、きついんですよ。自分を好いていてくれるんなら、なおのこと。
えっ、もう夜が明ける。こんな不規則で一か八かの生活してる私もまた、ひょっとしたら「ハート・ロッカー」症候群なのかもしれない。