ただのカン
パソコン関係の管理を頼んでいる若い人に聞いたところでは、最近のAIの技術はものすごく進んでいて、彼の専門家としての目で見てさえも、にせものかそうでないか簡単にはわからない画像や記事が増えて来ているという。「画質なんかもめちゃくちゃよくて、うちの母なんかライオンとゴリラの格闘している動画を、信じ切って夢中で見てますよ」と憮然としていた。
彼がいるから私のパソコン生活は成り立っている状態なのだから、そういう話を聞いても私の知識や能力では、何の専門的なコメントもできないのだが、ただのカンみたいなもので、とっさに「そうかあ、そうやって、いわば理系の方面がものすごく進んで行ったら、逆にもう、そういうにせものを見抜いて正しい判断や選択をするには、より理系の力を伸ばしたり磨いたりするのでは対抗できなくて、むしろ文系の能力や知識を高めることが必要で効果的なのかもね」と感じたままのことを言ったら、彼は合わせてくれたのかもしれないが、「そうですね」と賛成してくれた。自分で言っといてあまり自信がないのだが、でも、どこかでそんな気もする。
もともと日本でも世界でも、古くは文系も理系も区別されず、ひとつながりの学問だったはずで、技術でいくらAIが完璧になっても、それに対応できるのも支配できるのも結局は人の心や感情や哲学のようなものでしかないように思えてならない。
数日前にここで紹介したNHKテレビの「映像の世紀」は、手堅く地味でしっかりした内容で、おおっとのけぞるような衝撃的なものではなかったが、じわじわ実感できたこともあった。とても個人的なことだが、私は実写フィルムなどもこれまでいっぱい見て来たはずだが、それでも何となくヒトラーは、ちょこまか歩くこっけいな小男というイメージがあった。でも「映像の世紀」で登場する映像のヒトラーは、特に滑稽さも異常さも感じさせない、落ち着いた信頼できる外見に見えた。立花なんちゃらとかよりも、はるかにまともな人物に見えた。まあ確かに初期には実際、そうだったのだろう。
もうひとつ痛感したのは、番組のタイトルになっている「ドイツ国民は共犯者となった」に関わるのだけど、戦争が拡大し戦況が悪化しても、ヒトラーとナチスはドイツ国内の市民生活を決して悪化させなかったということだった。ポーランドやフランスなど、占領し征服した地域から取り立てた物資で、国民生活は前よりずっと豊かに優雅になって行って、それが国民を満足させ、ホロコーストや占領地域の悲惨さや悪に目を向けさせなかったのだという。
これはちょっと考えさせられた。戦争中でも現在でも、私たちは貧しさや生活水準の低下を政府や指導者の罪として責任を問う。戦争の悪も、それと重ねて弾劾されやすい。
だが、それだと、ヒトラーのこのやり方に抵抗はできない。庶民や市民の生活が豊かで恵まれていることは、たしかに大切なことだけれど、それを基準にしていたのでは、支配者の悪を見過ごすことになってしまうかもしれない。
とっさに思い浮かんだのは、「志の高さ」ということだった。それを持っていなかったら、生活水準だけを基準にしていたら、私たちは悪や戦争をくいとめられない。
文系の能力を高めなければ、理系の過ちを修正できない。その私の「ただのカン」と、どこかでつながる気がする。
そんなことを考えながら、テレビでプロ野球のオールスター戦を見ていたら、全部見ていたわけではないが、日ハムの新庄剛志監督が全力投球をしたとしか思えない、ものすごいお遊びの趣向が満載で、いろいろ何だか死ぬほど笑えた。どこまで新庄監督が考えたのかは知らないが、何だかほとんど彼が考えたような気がする(笑)。160万円するサングラスに文字が浮かび上がるようにして、それを使って三塁コーチャーになってサインを出したり、この世のものとも思えないことをいろいろやっていた。ちなみにソフトバンクホークスには元選手で今は職員の西田哲朗広報がいて、選手のころから面白い趣向を片っぱしから考えつくので有名だった。今でも活躍している。新庄監督はきっと会ったことないだろうが、絶対に気が合うから協力したらいいのにと思ったが、それもそれで恐ろしすぎるかもしれない。
そんなこんなで新庄監督は打線のオーダーを、福引で使うようなガチャポンくじで決めさせるわ、モイネロ投手はいつもと反対の右手で投げるわ、選手たちの何人かにマイクをつけて(大リーグでは前からやってるそうな)試合中に放送席としゃべらせるわ(周東選手はヒットを打ったとき、「(フライにならないよう)落ちてー!」と叫びながら走ってた)、他にもあれこれ面白かった。
交流戦があるのだから、オールスターは不要という声もあるようだし、こういう方向に特化していくのは悪くないんじゃないだろうか。
その後で報道ステーションを見ていたら、石破首相の退陣についての取り沙汰がいろいろされてて、前にも書いたが、またしてもこの番組は、いいことをしてるつもりでいらんことをしてるような気がしてならなかった。まあこれも私のただのカンかもしれないが。
マスメディアも自民党も、選挙の大敗を石破首相の責任と言うが、よくまあそんなことが言えるよね。こんなに自民党が見限られた根本の原因は、裏金問題じゃなかったのか。次期首相をめざす一人の高市早苗氏の紹介で「しかし高市氏にも困難があります。前回の総裁選でも推薦者を集められずに苦労したのですが、何とかそろえた人数の内七人が今回落選しています」とか言っていたが、その推薦者の中に裏金議員が十三人もいたろうが。その責任もとってほしいよ、選挙結果を云々するなら。
そもそも裏金問題を最初に暴いたのは共産党で、それを他のメディアが追っかけて問題にして、それで皆自民党に失望したのがことのはじまりで今回の結果で、その共産党が議席を減らしてるんだから、いったい国民もマスメディアもものごとの筋道をどう考えてるんだろう。何に失望したの。何に怒ったの。何をめざそうとしたの。石破首相に文句言ってる場合かよ。歴史を振り返れなんて高級なことは求めんから、ここしばらくのことだけでも、ちゃんと思い出して、整理してみたらどうなのさ。まあ参政党の得体の知れなさが、さんざんかきみだしたのはわかるとしても。
その参政党も賞味期限が急速に切れてるようで、ネットでは悪口もかなり増え始めた。知れば知るほどボロが出るのはしかたがないが、これについてはまた書きます。
そう言えば、だいぶ前の選挙中だったけど、プロ野球関係の何かのスレッドに「野球ファンや関係者には参政党嫌いが多いね」と誰かが書いてて、「ふだんから選手やチームに関するデマに悩まされて苦労してるから、デマに対する反感が強いんだ」と誰かが応じてた。特に反論もなかったけど、ほんとかな(笑)。ありそうでなさそうで、この真偽もちょっと確かめようがない。
