ぴいちくぱあちく
この季節になると、あちこちにツバメが巣を作り、ひなが口を開けて餌を催促しているのが、わりとよく、下から見える。クリーニング屋さんの店先のは、カラスに襲われてしまったようで、今年は来たのかしら。よく行くスーパーのひとつの玄関には二ケ所も巣ができていて、店の人は下に箱を置いて、うっかり客が通って糞で被害を受けないように、注意書きを貼っていた。
毎年同じことを書いているかもしれないが、下から見て、ぴいぴい鳴いているひなたちを見ると、黄色いくちばしの回りが強烈に目について、いかにも生意気な、元気な若々しさを感じる。「くちばしの黄色い若僧が」という表現を思い出して、あんまりしっくり来るものだから、いつも一人で吹き出してしまう。この表現って外国語にはあるんだろうか。日本語で誰が使い始めたか知らないが、もう最高の表現だと思う。
とか言ってたら、ツバメの天敵かもしれないが、カラスの立派な大きな黒い羽根が玄関先に落ちていた。思わず拾って、マッチ入れにしている花びんにさしてしまった。フェイクの赤い花をさしている中に入れると、何だかおしゃれな感じもするのよね。ひとりよがりか知れないけれど。
読んでない本がまだいっぱいあるのに、ついまた夕方、どーでもいい文庫本を山ほど買いこんでしまった。『老人と海』のちがう訳まで買っちゃったんだから世話はない。
若い人にあげようと思って、古い文庫本の阿刀田高『ギリシャ神話を知っていますか』を書庫から持ち出して、ぱらぱらめくっていたら、昔読んだ時は変に色っぽすぎてポルノみたいで、あんまり好きでもなかったのが、今読むと、そのえげつなさがやたらに面白く、手放せないぐらい読み返して悦に入っている。これだから困るんだよなあ、読書ってやつは。年やら体験やら環境やらによって、どんどん好きなものが増えてしまうのだもの。