今どきの指導者
昨日の話の続きですが、「質問も意見も出ずに終わった」で思い出すひとつは、例の広陵高校の保護者への説明会ですね。SNSで話題になっているようですが、あれだけの事件の説明会に会場から何の発言もないというのは、やはりいろんな事情を逆に連想させて私も重苦しい気分になります。
高校側もそれなりに長いこと蓄積してきた価値観や問題の整理があるでしょうから、そう簡単に片づけられないことは多いだろう、という話は、前にもしました。
その時も書きましたが、プロ野球でソフトバンクホークスが、こういう今どきの若者を成長させる指導体制について、かなり大規模かつ根本的に取り組んでいることについて、喜瀬雅則氏の著書「ソフトバンクホークス4軍制プロジェクトの正体」(いつも思うが長いタイトルだなあ」が参考になると思っているところです。
2軍どころか3軍や4軍と言ったって、一応ホークスのプロ選手をめざして入ってくる若者ですから、一定以上の能力とともに、精神力や向上心も目的意識も普通以上にあるはずです。でも、指導者のコーチや監督に言わせると、やる気がないし厳しく言っても効果がないし、本人のやる気を引き出すためにはどうするかが、とても難しいのだそうで。
前回、どこぞの地方議会の世にもしょうもない資料をお見せした後の、気分転換としてでも、かつての名投手で、今はホークス4軍の監督の斉藤和巳氏の、あまりにもけなげでさわやかな述懐を、どうぞごらん下さい。
「こっちが『熱』を持って話しても、ちょっとしたら、また同じことの繰り返し。イラッとするじゃないですか。そんなん、何回もありましたから。でも、言ったことが伝わると思う方が都合良過ぎる、というレベルにいることを、まず自分たちが認識しないといけないんです。だから言い続ける。もう、根気です」
前にも書きましたが私は斉藤和巳投手の全盛期を知りません。でも球界のレジェンドであるこの人の、指導者としてのこのことばには、教師やら上司やら多くの人が共感しすぎて涙するのじゃありますまいか(笑)。「言ったことが伝わると思う方が都合良過ぎる」ですよ。なんかもう、すごすぎる。
そう言えば同じく名選手として知られる本多コーチも、どこかのインタビューに答えて、「周東なんかが一番よく知ってると思うけど、コーチになりたての頃は怒ってばっかりで恐いと思われていた。でもだんだん、それではだめだと気がついた。指導される側は、僕の目しか見てないし気にしてない。そうじゃなくて、自分自身が成長しようと思うのでなければいけない」みたいなことを話していて、へーっと頭が下がりました。要するに現ホークスの指導者たちは、多分広陵高校がめざすものとはまったくちがう水準で、若手の指導に取り組んでいる。そうでなければ、この時代には対応していけないということを、組織全体が実感しているのでしょう。
それにしても毎日暑いなあ。庭仕事をしたくてうずうずしているのですが、日中はとても戸外の作業はできない。朝夕そそくさと水をまきながら、ああ、このすみっこは、草を抜いて何か植えたら、とても魅力的なコーナーに生まれ変わるのにとか、このもしゃもしゃの木の二本は、まん丸く刈り込んだら面白かろうとか、アイディアばかりが生まれて欲求不満でもう死にそう。ジャスミンとハーブがはびこっている通路を、早くきれいにしようとあせっている内に、滅びたと思った黄色のカンナが、ジャスミンの中から、ちょこんと咲いて、またまた申し訳なさでいっぱい。本当はもっと大きくなるのにねー。
