1. TOP
  2. 岬のたき火
  3. 日記
  4. 六年生の夏(18)

六年生の夏(18)

焼き物の豚の蚊取り線香入れって、今は大量生産で、どこの店にもおうちにもありますよね。でも私はこの時初めて見たんです。そのまたずっと後で、昔というか戦時中というか戦前というかを舞台にした演劇を見て、この豚が小道具として出ていたので、どきっとして時代考証まちがってんじゃないかとあわてました。でも、そんなはずもなく、そのころからあったんですよね。でもなぜ私の周囲には全然見当たらなかったんだろう。いまだに謎は解けません。

8月17日 日曜 天候◯ 起床9時30分 就寝11時0分

図画 形をとる
 手紙 矢野先生

朝、ねぼうして、朝食は、10時ごろ食べた。食べてしまっても別にする事もない。一時間ほど、ボヤーッとしてすごした。それから、おばと一しょに配給所へ、かとり線香を買いに行った。かとり線香と一しょに、やき物のぶたが売ってあったので、変に思ってこれは何ですかと聞いたら、店員は得意そうに説明した。おなかの中に下がっている針金にかとり線香を引っかけるのだそうだ。面白かったのでさっそく一つ買った。家に持って帰って、母をびっくりさせてやろう。買おう買おうと思いながら買ってなかった白ズックも一足買った。帰るともう、ちゃんと昼食の支度がしてあった。してあった事はしてあったけれど、朝食が遅かったので、これっぽっちも食べたくない。とうとう、私もおばも伊佐子ちゃんも昼食はぬきにした。おじだけは朝食が八時頃だったので平気でもりもり食べていた。

写真は叔父と伊佐子ちゃんと私。田舎の家のぶらんこです。誰か近所の人に作ってもらったんだと思うけど、伊佐子ちゃんや友だちや一人ででも、よく乗ったなあ。最初は狭い木の座席だったのが、いつからかちょっと幅広の板にしてもらって、そのお尻を支えてくれる感触が今もはっきり思い出せます。

叔父も穏やかなカッコいい人でした。あの昔に、家事を全部して、叔母の下着も洗濯していましたし、人に知られても平気でいました。伊佐子ちゃんは男性はそういうものだと思っていたので、結婚して(相思相愛のご主人でしたが)びっくりしたらしいです。

Twitter Facebook
カツジ猫