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六年生の夏(27)

この日記の最初から、ずっと起床が6時になっていて、これは適当に書いてるのだろうと思っていたのですが、どうやら当時は毎朝、子どもたちは駅前の広場に集まってラジオ体操をしていたようです。その記憶だけはかすかにあります。

田舎に帰ったとたん、伊佐子ちゃんが透明人間のように消えてしまっている。そう言えば彼女は近くの友だちとかいなかったのかしら。引っ越しが多かったから友だちを作るひまがなかったのかな。別にけんかをしていたのではないと思うけど、自分がいやに冷たく見える。

叔母は本当に私をかわいがってくれたのです。この時も百円札をくれていますが、多分当時だと千円、ひょっとしたら一万円ぐらいの価値があったのじゃないだろうか。

私たちは、よくこうやって川で遊んでいたけれど、案外深いところもあって、ときどき子どもが溺れて死んでいたような気がします。それも気にせず、自分たちだけで、こうやって遊んでいたので、これも今考えると大胆ですよね。

8月26日 火曜 天候◎ 起床6時0分 就寝10時50分

ねぼうするくせがついていたので、けさはなかなか起きられなかった。駅に行くと、皆、ワアワア言って私に話しかけて来た。やっぱりこっちの方がおばの家より気がおけなくていいなと思った。おばは八時の汽車で帰ると言って体そうから帰ると、せっせと荷物をつめていた。もちろん見送りに行った。ホームで、チョコレートでもと言って百円くれた。チョコレートなんて別にほしくもなかったから、ポケットに突っこんだままにしていたら、きれいさっぱり忘れてしまった。帰って少しすると、つるさんが来て、今、川に洗たくに来ていると言う。「そんなら、うちも行くよ。川で遊ぼう。」「うん、そんなら、うち、先に行っとくよね。」「どうぞー。すぐ行くから。」「おいでよう。」「ああ、行くよ。」川に行くと水に入りたくなる。水に入ればあばれたくなる。流れのはげしい所でバシャーンバシャンとやるんだから、たまったもんじゃない。あっと言う間にビショぬれになってしまった。
「ああ、あ、よう子ちゃん、ポケットがぬれて。中のかみがぬれとるわ。」ビクッとして見たら、百円札がビショビショ。引っぱり出したら水がボタボタ落ちる。家に帰って、机の横にかけて、かわかしている所だ。

写真は、その、よく遊んでいた、家の横の川。

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カツジ猫