悩ましい麦
愛猫キャラメルがエイズで亡くなってから、もう二十一年が過ぎました。
八歳の若さで死んだから、晩年と言うのも変ですが、彼は最後の数年、なぜか私が花屋さんで買ってきた麦の葉っぱが好きで、よくかじっていました。
彼はエイズと診断されても、ずっと太って元気いっぱいだったのですが、急に具合が悪くなって食欲もなくなったころ、私は麦を求めてよその麦畑のはしっこのあぜ道から夜に紛れて数本取って来たりしていたものです。どーでもいいけど、私が共産党員とかだったら、どんな微罪でも起訴したがる公安関係者に逮捕されていたかもしれん。
最近、庭いじりが高じて変なことばかり思いつく私は、キャラメルをしのんで庭に麦を植えて、命日に供えてやろうかと考えました。
しかしながら麦の種なんてどこにも売ってなくて、JAにも行ってみたけど大量にしか販売しないそうで、またまたネット検索して、ようやく観賞用だか何だかの少量の袋を手に入れました。
よし、まいてやると勢い込んで、はたと気づいたのがですよ、庭に来る野良猫たちだって、これが嫌いなはずないから、かっこうのエサ場になっちゃうじゃないかということで。十何匹も来るのだから、中には絶対、好みのやつがいるだろうはず。
はああ、と頭を抱えています。
まあそうなると、今の猫のカツジが使っている、金網で囲った庭にまくしかないわけよね。カツジが麦を好みかどうかは別として、もう選択の余地はない。
何でこんなこと、気づかなかったかなあ自分。まあまいてしまう前でよかったよ。