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覚醒剤や闇バイトより恐いのは

車に積みっぱなしにしていた冬用の毛布二枚を、えいっとばかりに、やっとコインランドリーに持って行った。そうしたら何と機械が新千円札に対応してなくて、バッグの底からコインをかき集めてやっと洗濯にこぎつけた。しかしその後の乾燥もあるから、がるるとうめきながら、近くのスーパーの中の銀行に行って、ATMで金をおろしたら、これまた全部が新千円札。

しょうがないので、表に並んだ自販機でコーヒーやお茶のペットボトルを何本も買って、そのたびに千円札を崩し、ようやく必要な分のコインを確保した。しかし、自販機の中にも新札に対応してないのがあって、まあいいけどさ、日本社会って何となく機能不全を起こしてるんじゃないか。昔はこんな間抜けたことなかった気がするのだが。

何はさておき、毛布はちゃんと乾燥し、ベッドの寝具も冬用に変えた。上で寝ていた猫のカツジは移動させられて機嫌が悪かったが、お刺身をわけてもらって、今は熟睡している。ペットシーツのトイレにも無事になじんで、毎日元気にたっぷりのおしっこと、ころころうんちをして、私を喜ばせている。でもこんなのでうれしがるのは私だけだろうから、留守番の人を頼むのはちょっとはばかられて、外泊が出来ない。こやつが死ぬまで家を空けられないのはしかたがないとして、あんまり長生きされた日には、こいつの死後、世界旅行や豪華客船クルーズに出かけようとしても私はもう老衰で歩行不能になってるんじゃあるまいか。

さてと、SNSと県知事選にまつわって、どうするべきかの三番目を書く。今回は超短い…はず。

大学で講義をしてると、今の受講生はそんなことはないが、昔は受講する人数が多かったこともあり、毎時間、小レポートを出させて出席確認をする際、代返ならぬ代筆で、他人の分まで授業の感想や与えた課題を書いて提出する学生が何人かいたりした。

私はもともと、事務方から何かの確認を求められた時のために一応の出席確認をしていたので、少々欠席しても成績に関係ない評価をしていた。だから、そもそもそんなに必死になって他人の分まで代筆をするのも、無駄なことだなあと思って、まあめんどうだから放っておいた。

ただ、授業が度重なるにつれて、だんだん異様に腹立たしく不愉快になる自分に気づいた。その理由は単純で、そうやって他人の分まで、しゃかしゃかと適当に短いレポートを書いて来る人の文章というのが、ただもう純粋に気味が悪くて汚らわしくて、それが書かれた紙を指でつまむのもいやなぐらいにおぞましくて、吐き気を催すからだった。

そんな代筆かどうかなんてわかるのですかと言われるかもしれないが、これって私だけじゃないと思うのだが、わかるのですよ。そういう、特徴のない生気のない、のぺっとした文章は、ひと目で、なぜか。他人の分まで書けるのだから自分は才能があると思っているかもしれない、あさはかさと、薄っぺらさも安物の油みたいに浮き上がっていて

注意したことも一度ぐらいはあったかもしれないが、どうせ何を言われてるかわからないし、改めもしないだろうと思ったから、放っておいたことの方が多い。ただ、つくづくと感じていたのは、こんないいかげんな文章の書き方をしていたら、確実に文章やことばから復讐されるだろうということだった。心のこもらない、適当にでっちあげた文章を書き流す癖がついたら、そんなものを書いた指先から、身体も心も脳みそも腐って退化して行き、それは二度とは取り返せない。きっと死ぬまで、感情も思考もいいかげんなでっちあげの借り物しか作り出せず、そのことに自分でも気づかないまま、薄っぺらの安っぽい、何も見えないわからない、半分寝たままのような一生を送るのだろうと、本当にほぼ確信できた。

怪しげな情報に踊らされだまされて、それでも純粋に本心から必死でデマを信じて拡散してしまう人は、私に言わせればまだそんなに心配はないと思う。だが、情報戦の中で、金をもらったり、それなりの利益を得たりして、誰かを攻撃したりする文章を拡散する人は、本当に、実はものすごい危険に身をさらしてると思う。実際に、型通りの、判で押したような、似たりよったりの大量の投稿がくり返しなされるのを見ると、そうやって、文章やことばにつながる自分の精神を破壊し腐敗させて行ってる人たちが、かなりいるのではないかと思う。

私に言わせれば、こんな作業に携わるのは、闇バイト以上に危険な行為だ。実際私は、金をやるから、人を殺すか、言われたままの文章のコピーをSNSに流すか、どっちかしろと言われたら、人を殺す方がまだましかもしれないと思うだろう。そのくらい、自分を裏切り、切り売りする文章を書くのには、危険がともなう。デマやインチキ情報にだまされるのはまだしも、安易な気持ちで自分でも信じていないことを気軽に書いて公開することは、本当に覚醒剤の常用以上に恐ろしい。そのことを、骨身にしみて、誰もが知っておくべきだろう。

おどかすわけじゃないけどね、私のこの文章を読んで、特に何も感じない人や何のことだかわからない人は、そろそろ毒が身体に回ってると思うよ。

いよいよ寒くなったので、昔、叔母がくれた毛皮のコートを引っ張り出した。かなりいいものらしいけど、もうこの年になったことだし、普段使いに着倒してやろうと思う。

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カツジ猫