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633爆撃隊

ゆうべ寝る前にやっと、注文して届いてた「633爆撃隊」のDVDを見た。(このリンクを見ちゃったら、この映画のいいところ全部見ちゃうようなものなので、気をつけて下さいませ。ここまでの場面は地味ですが、やっぱりちゃんと見た方が、絶対に楽しめますから。)
昔、学生のころだっけに、友人と二人映画館でこの映画を見た。その頃はまだいろいろとのんきな時代で、映画や小説のネタばれもミステリでなければ平気だったし、映画館で隣同士が小声でおしゃべりするのも、けっこう黙認されていた。

私と友人はいつもいっしょに映画を見に行っていて、この映画でいわば主役の、きゃしゃなのに鋭い感じのカッコいいモスキート戦闘機が画面いっぱいに飛ぶのを楽しんだ。でも、前やら横やらいろんな角度の画面が続いて、ずっと三機だけしか映らないので、私たちは小声で「三機しか調達できなかったんやろか」「そだね」とささやきあった。
そのとたん、いきなり画面が遠写しになって、十機近くの戦闘機がうるわしく雲間に並んでスクリーンいっぱいに映し出されたので、私たちは「聞こえた?」という感じで無言で必死で笑いをこらえたのを覚えている。映画を見終わったあとも、そのことを言い合ってしばらく笑った。
テレビ放映などで、それからも何度か見るたびに、いつもその時のことを思い出しては一人で笑っていた。

ところが最近ふとネットで検索して予告編を見たら、三機だけがしばらく映ってすぐにたくさんの編隊になるあの場面が、予告編で見当たらない。
幻か記憶ちがいか、それとも映画を再編集したのかと、何とはなしにもやもやしていた。
DVDを買ったのも、それを確かめたかったのも、ちょっとある。
見直していると、冒頭場面ではやっぱり記憶に残る映像はない。その内に気づいたのは、いくら私たちでも開巻早々の冒頭から、そんな難癖はつけないだろうから、もしやラスト近くのクライマックスの総攻撃の場面だったのかしらということだった。

映画は、多分私たちがミーハー気分で映画を見るきっかけになったのだろうジョージ・チャキリスもカッコよかったが(以下ネタばれ)彼が途中でいなくなるのも、スマートでシャープな存在は戦闘機だけでいいみたいな感じで、大変正しく(笑)、最後の総攻撃は、今の映画に比べると、いろいろとてもあっさりしていて物量も映像も素朴なのに、なかなか見ごたえがあって楽しめた。「スター・ウォーズ」のどこかで、この場面がもとになった描き方があるというが、さもありなんだ。音楽もいい。

そしてやはり思ったとおり、その最後の攻撃の画面で、私が覚えていた通りの、三機から十機の戦闘機画面が登場した。友人の押し殺した笑い声が隣で聞こえるような気がした。
そして、今なら、これでもかと描く最後のいろんな説明もなく、戦争や軍隊の非情さや虚しささえもかすかににじませながら、実にあっさり映画は終わる。最後のエンドロールも皆無と言っていいほど何もない。
だからかえって余韻が残り、何回でもまた見たくなる。かゆいところに手の届くようなサービス満点の江戸の後期戯作みたいな今の映画とちがって、これはこれで、なかなかいい。

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カツジ猫