豚も車も
前に交通事故があったとき、運ばれていた豚の運命がまず気になってしまった私は、ときどき人間があまり好きではないのかと自問自答することがある。
それでも豚はまだ同じ生き物だが、今回のビッグモーターの事件で、何より車たちのことを考えて胸を痛めているのは、我ながらヤバいと思う。
修理してもらえると思って預けられて、保険金目当ての社員たちからドライバーで傷つけられ、ゴルフボールを入れた靴下で力まかせにたたかれたりしたときの、車たちの驚きと恐怖と痛みと絶望と孤独は、どんなものだったろうと思うだけで、つらくて悲しくて金もうけのためにそんなことをした社員や、せざるを得なくした会社が、憎くて憎くてたまらない。とか書いたら、どっかの変なコメントが、「機械に感覚や感情がないことは、これこれの資料によって証明されています」とか、したり顔に書いてくるんだろうか。こんなくっだらないコメントに使用される文字のひとつひとつまでが、気の毒で哀れでしょうがない私は、本当に病気だ。きっと「過度擬人化症候群」みたいな。
まあ、「トランスフォーマー」なんて映画もヒットしたんだから、似た気持ちでいる人はきっといるんだろうと思うけど。
今朝は日が昇ってすぐぐらいに、表庭のヒメエニシダを刈り込み、その後ろの巨大ジャスミンの茂みも切り払い、ほぼなくしました。柵から身を乗り出し、茂みを引っ張ってはさみで切りながら、何やら「老人と海」の主人公がカジキマグロと格闘している気分でした。お隣りの駐車場の屋根の上まではびこっていたジャスミンなので、だいぶ気が楽になりました。
その後、上の家の魔窟のような書庫から荷物をだいぶ引きずり出して、おかげで今度は居間が大変な状況に。通路がやっと確保できた書庫の奥にたどりついたら、ダンボールがまだかなりあったのに気づいて、むしろ闘争本能がわく。もう一二回、縛って出したら何とかなるかな。
その後、涼しい部屋の中で、古紙の処理をしていたが、外の仕事と比べて楽すぎて、気がとがめてしまう(笑)。まあ、これはこれで退屈で大変なんだけど。
町田康の「口訳 古事記」にはまりそうで恐い。じっくり読んだら、あっさりとありふれた表現で書いてるように見えて、その実すごく手がかかっている。原作に忠実でありながら、ところどころ独自の解釈や考察を加えているのが、他の部分と溶け込んで一体になりながら、ものすごくうまい。サホビコとサホヒメのとことか、ヤマトタケル関係のとことか、ドラマチックな部分は単純そうにしていて、無駄なくちゃんとめりはりつけていて、何度読んでも飽きない。いかん、仕事でも読書でも料理でも、私ははまってしまうと抜けられない。大恋愛なんかしなくてよかった。絶対に相手にうざがられて、最後は無理心中まで行ってる。
プロ野球は、お祓いでもした方がいいんじゃないかと思っていた日ハムとホークスが、やっと連敗から脱出したようだ。どっちも、そんなにチームの雰囲気も実力も悪くなってた風もなかったから、監督も選手も困ってたことだろう。まあ、逆に言えば、こういう状況だったら、いつかは抜け出せるものなんだろうということか。