映画「放射能廃棄物」7-映画「放射能廃棄物」感想(新5)
◇その放射能廃棄物を地下に貯蔵する施設ですが、まあそりゃ海に流すのどっかの辺境に放置するのに比べれば、一応まあ誠実というか良心的ではあるわけです。がしかし、誰でも考えることですが、何万年だか何十万年だかたっても、まだ危険なしろものを地底に埋めて、そのあまりにも遠大な未来の人類か生き物かに、どうやって警告するかって話ですよね。ナレーターの女性が「それは大丈夫なんですか、不安はないのですか」と聞いていました。
作業していた技術者の一人で年輩の人は、あまりはっきりしないあたりさわりのないことを言ってましたが、もう一人の若い人は、これがまたメガネをかけたいかにも明るい顔だちで、そやつがいとも陽気に軽やかに話すには、「いい質問です。それについては、私たち技術者の中でも意見が分かれているのです。ある人たちは、危険な廃棄物を埋めた上に、たとえばピラミッドのような人目をひく建造物を建てるべきだと言っています。そうすれば未来の人々は、それを大切に扱って破壊したりしないでしょう。別の人たちは、これと反対の意見で我々は廃棄物を埋めた上には、一切の目立つものを作るべきではないと言っています。そうすれば、未来の人々の注意をひかないですむので、そこはそっとしておかれるでしょうから」だって。
彼はこれをほんとに生き生きと軽々と、楽しげに話してました。まあね、最初に書いた勇敢で良心的な科学者たちの、どこかとても楽天的で前向きな表情や態度と、やってる方向は正反対でも一脈相通ずるものも、ひょっとしたらあるかもしれんですよ。私は個人的には、深刻に陰々滅滅としてるより、こういう明るさは好きですが、その私でも、この人のこの態度は、言ってることの内容ともあいまって、何かもう、あきれかえって人類に絶望したくなりました(笑…ってる場合じゃないけど)。
この映画は、全編日本語で吹き替えしてあって、バックにうっすら重なるかたちで元の言語が流れます。でさ、私はこのDVDをせりふの確認のために何度か見たんですが、二度めに見たとき、この人の吹き替えはわざとケーハクにしゃべらせてるなと思ったんですよ。でも、もう一回見直したら、こいつの表情や、バックに流れる口調などから考えて、やっぱりこれはそんなわざとじゃなくて、正確な吹き替えだわいと確認しました、ええ。
◇それにしてもねえ…
何を期待してたんだと言われると困るんですが、それまで、あまりに救いのない、やりっぱなしの投げやりの、絶望的な状況を延々見せられつづけたから、つい、まあ、これ(地下ふかーく埋める)が今んとこせいぜい精いっぱい考えた唯一の解決策なわけだから、そりゃ私は、それにだって反対ですが、まあ原発推進してる人たちとしては、一番きっちりした目玉の対策してる分野なわけだから、そこはどういうか、哲学的にも「なるほど! 私はそういう風には考えなかった、その観点は見逃してた」みたいな考え方のカケラなりとも、何か聞けるかと、ちょっとはまあ、思ってたわけですよ。でなきゃもう、あんまり救いがないじゃないですか、ようわからんけど。
したらば、「ピラミッドつくるか、徹底的に目立たなくしとくか」を議論してるって言うんでしょ。なんかもう、アホらしすぎて泣けてきて、人類もうだめじゃないかって、みぞおちのあたりから、じわっと虚無感がこみあげて来た。
考えてみりゃ、相当の放射能があっても植物は茂ってるようだし、きっと何万年かしたら人類はいなくなって、アメーバかエイリアンが地球を支配してて、そういう生き物には放射能なんかきっと全然無害なのかもしれないし、もういいや、それでも、こんなアホなこと言って核のゴミ地下に埋めてる人類より、そういう生き物の方がよっぽど私と気持ちが通じ合うし好きになれる、とまで瞬間思ったくらいです。