美しい旗
参政党は「治安維持法がいいなどと言ってはいない」と言い出してるそうだ。これだからなあ。私は前に「選挙前と後で公約が変わるのはけしからんが、選挙中の政見放送や街頭演説で言ってたことが日々くらくら変わるのは、もう投票対象として考える対象にもならない」と言ったけど、ほんとに、インチキめいた詐欺商法でも、ここまでいいかげんな出まかせのつぎはぎはしないのじゃないか。
ちなみに、この前ここで、『明治のサーカス芸人はなぜロシアに消えたのか』という文庫本を紹介した。実は読んだとき、一番印象に残ったことを書くのを忘れていた。それは佐藤優氏の解説で、スパイと疑われて銃殺になったサーカス芸人の一人の、ヤマサキ氏が、のちに冤罪であったことがソ連の最高裁判所で認められたことにふれて、次のように書いている。
ソ連の秘密警察の特徴は、尋問調書や公判記録だけでなく、密告の手紙、電話盗聴の記録、拷問の実態に関する報告書など、ソ連共産党や秘密警察にとって都合がよくないことであっても、記録にのこし、それを保存するところにある。帝政ロシアの秘密警察も同様の伝統を持っていた。秘密警察、司法関係者などを含め、ロシアの官僚には、歴史に対して正確な記録を残し、それを隠滅してはならないという文化が染みついている。現在のプーチン政権に関しても、政権にとって都合のよくない記録でも、それは極秘の指定の下で保存されているはずだ。(280ページ)
これを読んだとき、私は仰天し、どう考えていいかわからなかった。ただもしこれが本当なら、そして世界各国でいやしくもいっちょまえの文明国で、これがわりと普通なら、裁判記録や重要書類が消えてなくなるとか、そもそも作られないとかいう日本の現状は、もう相当に未開の未熟な国家になっているのじゃないかと、そこはもう痛烈に感じた。
政治家になろうとする候補者たちが人前で口にしたことに責任を持たないようでは、その状況はさらに加速しているとしか思えない。それにしても私は特に愛国心もないつもりの人間で、日の丸にも君が代にもこれと言った思い入れはなかったはずだが、こんなでたらめを垂れ流す人たちが、日の丸の旗をかかげたり、まきつけたりして喜んでいるのを見ると、なぜか、ものすごく胸が痛んで、美しい旗なのになあとつくづく何かが汚された思いがした。ろくでもない戦争ではあったが、それでもあの旗のもとに死んだ人や、今でも大切に思って競技その他にはげんでいる人も多いのに、そういうものすべてが、レイプされているようで、腹立たしくて痛ましくてたまらなかった。こんな安っぽい、何から何まであさはかな連中に、この旗もこの国も好きにさせてたまるものかと思うのは、不本意ながらやっぱり八十近くなって目覚めた愛国心なのかしら(笑)。
庭の花が一段落したので、花屋さんできれいな青い花を買って来た。雨で少しは涼しくなったし、このさわやかな色に気分を治して、また家の片づけに精を出すとするか。
