映画「ヒックとドラゴン」感想集「ヒックとドラゴン」感想-2
と言いつつ、またちょっとだけ。以下、多分完全にネタばれなので見てない方はご注意を。もっとも、このネタばれがわかってしまっても、この映画の魅力は別に全然変わらない気もしますけど。
まー、私の悪口なんてだいたい予想はつくでしょうけど、あのヒックの村を襲う、恐ろしいドラゴンたちと、どう和解し融和し共存するか、そこが一番難しいとこですよね。映画にする上でも、現実でも。
いっきなり唐突ですが、この映画のドラゴンて、「七人の侍」の野武士みたいなもので、襲うからには彼らにも何か事情か本能か趣味かがあるわけですよねえ。
「七人の侍」みたいに、とにかく相手を殲滅するかたちの解決もあるだろうし、実際ヒックの村がめざしてたのもそれでしょう。これがもう、ヴァイキングだから、戦いを楽しんで年中行事風になってるノリの描写が、深刻でなくてうまいんだよなあ。日本の大河ドラマの主役たちが皆、異様に平和主義で戦争嫌いなのが嘘っぽいのと対照的だ。
戦いが好きな文化?って、やっぱり存在する。この映画では戦いは悲惨じゃなくてスポーツみたいに愉快で明るく、それでも犠牲も恐さもちゃんと描かれ、戦わなくてはならないことのつらさや悲しさも強烈に伝わる。不快になるほどには強烈じゃなく、どこかほのぼのとして、でもしっかり伝わってくる。
「七人の侍」の場合、野武士たちの事情は明らかにされない。それはそれでいい、あの映画の場合には。でも、この「ヒックとドラゴン」じゃ、少年と傷ついたドラゴンの間にどうしようもなく友情が芽生えてしまっていて(その、ほんとに、どうしようもない、こみあげてわきあがる心の交流は、映像をとおして、これでもかってぐらい観客に伝わってくるから、もう誰にだってよくわかる)、悲劇に終わらせるならともかく、そうじゃなかったら、「ドラゴンの側の事情」を少年や観客は知らなければならない。いやでも、一応。
で、それがあれかよ、と私は思ってしまうわけです。
映像としては、それもすごい迫力でそりゃもう楽しめましたけど、結局さあ…それかよ。
同じアニメでも私が「カンフー・パンダ」を大好きなのは、あの悪役が悪役になったのは、善人だけど欠点もあってまちがいもした彼の師匠のせいであり、その悲劇がもう純文学なみの重厚さで痛切だったからです。
それに比べると「ヒックとドラゴン」の悪の描写と悪の役割はあまりに単純だし、あまりに軽い。
それを解決して訪れるハッピーエンドも、だからあまりに薄っぺらで、あまりに軽い。