映画感想あれこれ映画「英国王のスピーチ」感想

ひっさしぶりに映画の感想。

この映画、今見たらどーせ感想はわかってるんで、「あー、日本の指導者も今こんな立派なスピーチをしてほしい」しかないだろなー、というのと、キャラママさんもそうだと思うんだけど、私「奇跡の人」だの「マイ・フェア・レディ」だの「わが教え子、ヒトラー」だの、いわゆる調教、教育ものって、ひとつまちがうとけっこうエロい気味悪いもんだって気があって、それをきちんと意識しないで作ったり味わったりしてる映画は、目もあてられないからなーというのと、のふたつで、ちょっと見るのをためらってたんですよ。

もっとも主役がコリン・ファースだからなー、そんな失敗するわけもないとは思ってたけど。彼はまったく表情も姿勢も変えないで、しかも内面を見る人に伝えるという、どうやってできるのかわからないことをやってのける役者だからな。

で、見たら、すべて、やっぱりでした。もう、画面も演技も、すべて正統、安定、堅実、スキがない。しかも息苦しくなく、余裕もあって気楽に見られて、お見事という他はない。
まー、国王一家をあんなに身近に主役にしていいのかって問題もあるかもですが、不敬罪じゃないかと、王室をスターにしすぎるんじゃないかと両方の意味で。でもまー、「ゴッドファーザー」がヒットしまくってもマフィアが栄えたわけでもないからな。これはあくまでお話の世界ってことで、皆、見るんだろう、ということにしておけ。

これは筋や題材は悪くはないけど単純な映画で、まったくコリン・ファースをはじめとした俳優陣の名演技を鑑賞するのが楽しい映画でした。ジェフリー・ラッシュやヘレン・ボナム・カーターはもちろん、ガイ・ピアース(彼の活躍を見るのはうれしい)もデレク・ジャコピ(こんなに年とったのか、しかし派手なのは変わらんな)も、チャーチル役のあの彼も、しっかり、十分、自分の仕事をやってるし。
何しろ、「ちゃんとしゃべれるか」で、あれだけ緊張感が高まるのがすごい。誰も死なないし、誰も脱がないし、それでこれだけ盛り上がるんだから。

そして、この主役のジョージ6世は、ちょうど第二次大戦のころの人なわけで、だから、ニュース映画の中にちらっと出てくるヒトラーの演説。これがまた、すごく効いてる。最初に書いたように、今これを見たら「日本の指導者の演説はなんて下手なんだ」とかいう話に持って行かれそうになるけど、あの画面を入れることで、それを見て「演説がうまいな」とつぶやく王を描くことで、逆に、演説がうまけりゃいいってもんではないこと、威勢のいい、カッコつけのカリスマはどれだけ有害で危険かってことも、たくまず伝える。ちゃんとしゃべれない王の、たどたどしくつたなく口にすることばの方が、貴重で価値があるかもしれないことを実感させる。

だから、これは決して、「うまくしゃべることの大切さ」を訴えている映画なんかじゃない。むしろ「うまくしゃべれないことの貴重さ」を訴えている映画だ。「うまくしゃべれない人の話に耳をかたむけること」「うまくしゃべれないからといって、しゃべるのをやめてしまわないこと」の大切さを訴えている映画だ。

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カツジ猫