昔のコラム顔を出しておかないと

インターネットの掲示板から、 地方選挙の選挙事務所、身内の冠 婚葬祭にいたるまで、私が一番嫌 いなのは「顔を出しておかないと」 という、世間には広く通用してい るらしいことばである。地域社会 でもどこでもむしろ必要なのは 「顔を出しておかなくても」いざ という時には助け合えることだと 思うのだが。
まあ、そんなことは腹の中で普 段は思っているだけだが、笑えな かったのは数年前子宮筋腫の手術 で入院した時だった。一人でのん びりするつもりだったら、周囲は 目を輝かせて見舞いに行く行くと イベントもどきに騒ぎ立て、つい に私はぶちきれて「見舞いに来た ら絶交する。もらった物はその場 でごみ箱に捨てる」という趣意書 を職場に配布したら、さすがに誰 も来ず、病室はホテルのようにき れいで、先生も看護婦さんたちも 最高で、もう生涯で病院運は皆使 い果たしたなと思ったぐらい、天 国のような入院生活だった。
しかしこれは、病気が病気で、 手術直前までぴんぴんしていたか らできたこと、普通はこんなとん でもないことする力はないだろう。 聞いた話では危篤状態と聞くと、 「じゃ顔を見ておかないと」とさ ほど親しくない人も押しかけるも のだそうで唖然とした。正気の沙 汰じゃない。私なら化けて出る。
こういうことは人さまざまで、 死に目に誰も来てくれなかったら 化けて出てやると思う人もいるだ ろうから一概には言えないが、禁 煙車両がこれだけ発達している今、 病院にも禁客室とかできてくれな いものだろうか。

Twitter Facebook
カツジ猫