昔のコラムそれとこれとは別
最近私のホームページでは、二 月末公開予定の「マスター・アン ド・コマンダー」という映画の日 本版予告編が話題になっている。
映画はナポレオン時代を舞台に した、勇壮で重厚な中にも上質な ユーモアをたたえた海洋冒険物で、 批評家たちの評価も高い。ところ が予告編はこれを、映画にも原作 の小説にも歴史の上にも存在しな い「戦力不足のため無理やり軍艦 に送り込まれた幼い少年たちの泣 ける話」という設定をもとにして、 徹底的に宣伝している。
実際には映画に登場する当時の 十代の少年たちは貴族の子弟で将 来の士官候補のエリートとして誇 りを持って艦に乗り込んでおり、 予告編がこのような誤った紹介を しては映画そのものがまったくち がって見えてしまうと、既に海外 で公開されたこの映画を見てきた ファンたちは心配しているのだ。
これは私の完全な憶測むしろ妄 想だが、宣伝担当の人がここまで 前代未聞の原作ばなれ予告編を作 ってしまったのは、子どもたちが 積極的に戦闘に参加するなんてき っと日本じゃ抵抗あるから予告編 ぐらいは無理に行かされた話にし とこう、と思ったからではあるま いな。
だが私は戦争も軍隊も嫌いだが、 それをきちんと描いた映画はやは りそのまま味わうのが最高と思う。 そういう作品に反戦や戦争の悲劇 のイメージをこちらの好みや都合 から勝手にかぶせるものではない。
以前国語の教科書で宮沢賢治の 「注文の多い料理店」が環境破壊 を訴える教材として扱われている のを見てずっこけたが、何だかそ れを思い出してしまった。