昔のコラム家族をひきさくもの

青天の霹靂だった。
年度末で忙しく、どうしても実家 に帰れないのに、(Sという)シロ アリ業者が床下の点検に来るという。 昨年もトラブルがあったので老母に 「どんな工事も契約するな。どうし てもと言ったら必ず私に電話させろ」 と念を押していたのに、会議の合間 を縫って電話で聞いたら、「50万 円の耐震工事を契約した」とのこと。
気がついたら電話口で、声を限り に母に向かってどなっていた。
母を傷つけて自分も傷つき、その 後、恐怖が押しよせた。あれだけ約 束しておいたのに、こんなことをす るとは、母の精神状態はおかしくなっ たのではないか。絶望と不安の中、 重要な仕事も中断して、真夜中の吹 雪の中を往復六時間かけて実家に往 復し、母の無事を確かめた。
会社に電話し、工事の中止を頼ん だら了承していただけたが、既に大 部分取り付けた器具を皆外してもら うのも家がこれ以上傷つくのが心配 で、結局未完成の工事に43万払う ことになった。この間の私の精神的 肉体的ダメージ、仕事の遅延による 各方面への被害など、もちろん何の 補償もあるわけではない。
あまりに納得いかないので、現在 消費者センターに相談して今後の対 応を検討中である。その過程で唖然 とするような事実も新たにいくつか 判明した。
年寄りを自立させろと言うし、私 もそうしたいけれど、それがいかに 危険で困難な世の中か、あらためて 痛感させられる。このような実態を 行政の方々はどれだけ把握しておら れるのだろうか。

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カツジ猫