「水の王子」通信(144) 2023年02月10日(金) ミーハー精神 「水の王子 山が」第三十七回 【兄は驚かない】 「ああ」コトシロヌシはうなずいた。「それであんなに気にしてたのか、タカヒコネは彼のこと。だけどいったい誰が化けてるんだろうな。昔、彼に会ったことのある村人もちっとも疑って… [続きを読む]
「水の王子」通信(143) 2023年02月09日(木) ミーハー精神 「水の王子 山が」第三十六回 【青い木のある家で】 「どうしたんだ?」コトシロヌシは少し驚きながらそう言って、扉を大きく押し開けた。「まあ入って」 タカヒコネは元気ない足どりで入って来て、「泊めてくれるか?」といきな… [続きを読む]
「水の王子」通信(142) 2023年02月06日(月) ミーハー精神 「水の王子 山が」第三十五回 【息子と娘】 はじかれたようにふり向いた三人に、歯のない口で笑いかけて、スクナビコはよたよたと、かたわらの椅子に腰を下ろした。 「だってそりゃ、無理もないでしょう?」タカヒコネは言い返し… [続きを読む]
「水の王子」通信(141) 2023年02月05日(日) ミーハー精神 「水の王子 山が」第三十三回 【家族の事情】 オオクニヌシが目を見はったのも無理はない。緊張し、ほおをかすかに染めたスセリはいつにも増して若々しく、ほとんど少女のように見えたのだから。 「オオクニヌシ」と呼びかけたそ… [続きを読む]
「水の王子」通信(140) 2023年02月02日(木) ミーハー精神 「水の王子 山が」第三十二回 【スセリの決心】 けものの、ぴんと立てた大きなふさふさのしっぽの毛が、あるかなきかの風にそよいだ。なぜか今日は、けものはうならなかった。タカヒコネの足の回りを、子細らしい、もったいぶった様… [続きを読む]
「水の王子」通信(139) 2023年02月01日(水) ミーハー精神 「水の王子 山が」第三十一回 【月が満ちる前に】 先ほどまでの、全身にはりつめていた力はもう失せて、すくみあがったように動けずにいるタカヒコネから、ツクヨミはふっと目をそらして顔を上げた。かすかに笑って彼は身体も起こし… [続きを読む]
「水の王子」通信(138) 2023年01月31日(火) ミーハー精神 「水の王子 山が」第三十回 【真実の悪を求めて】 いつの間にかうなだれているタカヒコネを見つめるツクヨミの目が、すごみを帯びて青く光った。 「聞け」彼は静かに言った。「せっかくおまえが大切な秘密を教えてくれたんだから… [続きを読む]
「水の王子」通信(137) 2023年01月31日(火) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十九回 【消された未来】 タカヒコネは顔色ひとつ変えなかった。黙って湖面を見つめていた。ただ舟べりを握った手に力がこもって、指の節が白くなった。 ツクヨミはそれを見ていた。「おやおや」と彼はから… [続きを読む]
「水の王子」通信(136) 2023年01月30日(月) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十八回 【魚の影】 「うまいじゃないか」からかうような声がかかって、コトシロヌシの祭りの日のことばを思い出してみていたタカヒコネは、はっとしてふりあおぎながら、とびきりの明るい笑顔を作った。 … [続きを読む]
「水の王子」通信(135) 2023年01月30日(月) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十七回 【穏やかな日々】 湖を渡ってくる風がうすら寒い。タカヒコネは泥のついた手をちょっとこすり合わせて息を吐きかけると、かなりつるの伸びてきた野菜をよけながら、柵のこわれた部分をひもでしばり直… [続きを読む]
「水の王子」通信(134) 2023年01月30日(月) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十七回 【おかしな獣】 オオクニヌシが家に入って行ったとき、へやの中は何だかおかしな雰囲気だった。つぼやかごが、いくつかひっくり返り、ううふうう、ふううと、けんのんなうなり声がしている。スセリは… [続きを読む]
「水の王子」通信(133) 2023年01月27日(金) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十七回 【深まった闇】 「行きも帰りも同じ道っていうのもつまらんだろ」雲ひとつない空の下を、まぶしく輝く海を見下ろして舟を飛ばせながらツクヨミが言った。 「そうだな。いいながめだ」オオクニヌシも… [続きを読む]
「水の王子」通信(132) 2023年01月26日(木) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十六回 【殺された男】 「あのころ都の中では新しい動きがあった」スサノオは二人の前の湯のみに、新しい茶をついだ。「若者たちを中心に、次第に年かさの者たちにも広がって行った。危険なものではなさそうだ… [続きを読む]
「水の王子」通信(131) 2023年01月26日(木) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十五回 【夜な夜な考えても】 「さっきオオクニヌシがいきなりタカヒコネのことを言い出したから、驚かれたかもしれないな。私にもとめるひまがなくってね」ツクヨミは笑った。「あなたもなぜだかおわかりにな… [続きを読む]
「水の王子」通信(130) 2023年01月25日(水) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十四回 【消える手がかり】 スサノオは小さく何度かうなずいた。そして粗末な木の湯のみに茶を注ぎ、それぞれの前においた。飲んでくれとすすめるように手を動かして、再び椅子に腰を下ろす。 「君は私とこ… [続きを読む]